▼01:護衛チームとベッリーナ

「新入りを連れてくる」

ブチャラティがメンバーにそう伝えた。
つい先日ジョルノが加入したばかりで気の立っているアバッキオは眉をひそめ、ナランチャはへーと頷いただけで、フーゴも何を考えているのか解らない。ジョルノだけが解りました、と返事をした。
ミスタが男か女か聞いてくる。彼は新入りの話が出る度同じ事を聞く。ジョルノの時もそうだったし男と聞けばつまらなさそうにする。だが。

「女だ」

「マジ?」

ガタッと椅子を鳴らしてミスタが立ち上がった。
アバッキオの眉間のしわは更に濃くなり、フーゴの表情も少し翳る。

「このチームに女が入ってやってけんのかなー。泣かれたり騒がれたりするのは勘弁してほしいぜー」

ナランチャが肩を竦める。

「で?」

「何がだ」

「歳は?可愛い?胸は?大きい?」

ミスタだけが浮き立ってブチャラティに質問してくる。

「さぁな。詳しいことは解らない。ミスタ、変な気を起こすなよ」

「それこそ会ってみなきゃ解んねェなー」

ミスタの飄々とした態度にブチャラティは溜め息をついた。




変な気を起こすな、とミスタに言ったのは早まったかもしれない。
ブチャラティは隣を歩く新入りの女をちらりと見て思った。
待ち合わせ場所にやってきた彼女は長い銀髪を陽の光に透かせて現れた。
黒いワンピースが美しい銀髪と白い肌を際立たせていて、彼女の凛とした雰囲気に合っている。
血に染まることとは凡そ無縁な白い手を差し伸べられた時、ブチャラティは一瞬握手することを躊躇うほどだった。
隣に男であるブチャラティがいても、道行く人々が彼女を見ていることは解る。すれ違い様にヒュウと口笛を吹く男までいた。

「此処だ」

メンバーがいるリストランテに着く。

「素敵なお店ね」

彼女の赤い唇の端が上がった。よく見れば口元の左下にほくろがあってそれが扇情的に映る。
彼女を促すようにドアを開けてやれば、Grazieと言って中に入った。
店内の奥からナランチャとフーゴの声が聞こえて、また喧嘩してるのかとブチャラティが溜め息を洩らす横で彼女がくすりと笑う。

「賑やかなチームで楽しそうだわ」

「そう言ってくれると助かる」

つられてブチャラティも微笑み返す。うんざりとした気持ちもいくらか凪いだ。
テーブルについているメンバーに近寄ると、皆女の新入りを気にしていたのだろう一気に視線が彼女に向く。

「Che!bella……!」

ミスタが思わず呟いた称賛の言葉はアバッキオが勢いよく立ち上がった椅子の音にかき消される。

「レオーネ!」

突然彼女はアバッキオの名前を呼びながら彼に抱きついた。突然の行動にアバッキオが彼女の肩を掴み顔を覗き込む。

「……お前、アデレードか?」

「そうよ。久々に会ったのに……キスもしてくれないの?」

彼女がアバッキオの頬を両手で包むように触れながら笑いかけると、アバッキオは手で目元を覆うように押さえながら深い溜め息を吐く。

「キス〜〜〜〜〜ゥッ!?」

「ただのバーチだ……」

大騒ぎするミスタにアバッキオがそう訂正すると彼女を軽くハグしてちゅ、ちゅと頬を合わせる挨拶のキスを交わした。

「知り合いだったのか、アバッキオ」

バーチでさえも狡ィ!と騒ぐミスタをよそにブチャラティがアバッキオに尋ねる。
アバッキオは一瞬逡巡したがすぐに答えた。

「ああ。……従姉だ」

「そう言えばきちんと名前を言ってなかったわね。アデレード・アバッキオよ、よろしくね」

銀髪をふわりと揺らしながら微笑むアデレードにメンバー全員の心が捕らわれたことは言うまでもない。



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