折原臨也と紀田正臣

 



ドタチンに会いに…たかりにいくのはいいとして果たしてドタチンはどこにいるのだろうか。
困ったことに彼の家は知っているが今いるかどうかはわからない。ので、メールで確認してみる。

メールが帰ってくるまではとりあえず暇だ。そしてお腹がすいた。朝早くにきたつもりだが、あいつらの相手をしていたらいつの間にかお昼だ。

なんでもいいから腹に入れようと立ち上がってふらつくと、前方に面白いものを発見した。

「まっさおみくーん!」
「死ね。いや死んでください」
「酷いなぁ」

何やら待ち合わせをしているらしい紀田正臣に遭遇した。
聞けば帝人くんと罪歌と遊びにいくらしいではないか。…それは帝人くんに悪いことをしたなぁ。

そして更に聞き出してみるとなんと待ち合わせの時間にはあとなん十分もあるらしい!
これは、あれだよねぇ?
暇を潰すべきだよねぇ?

「それじゃぁ俺が暇潰しの相手になってあげるよ」
「全力でお断りします。早くどっかいけ…いってください」
「嫌だなぁ、暇なのはお互い様!ちょうどいいじゃん、ねぇ?」
「………ちっ」

正論をいわれ腹がたったのか返事の代わりに舌打ちをした。
そうだ、とあることを思い付いたので言ってみる。

「ねぇ正臣くん今日なんの日か知ってる?」
「ゴールデンウィーク」
「……そうだけどさ」

これはひどい。
最近の若者は何の日かも知らんのかね。せめて昭和の日とか言ってくれれば違うよと否定できるのに、困った。

「ってかなんですかその脈略のない話題。うざいですね」
「……いやぁ今日実は、」
「誕生日でしょう。折原さんの」

期待した俺が馬鹿だったとネタ明かししようとするが、言葉の続きは正臣くんが言ってくれた。
いやーこれは何デレ?ツンデレ?クーデレ?寧ろ死ねデレ?
目を丸くして正臣くんを見ると、目があったとたんに剃らされる。

「なんで知ってるのかなぁ?」
「帝人がいってました。プレゼント欲しいんすか?何がいいんすか?暴言すか?この糞が」
「そんなわけないよね!?普通にわかるよね!?」
「…ちっ」

最近の若者は舌打ちが癖らしい。
新しい情報がまた増えた。

「そうだなぁ、俺は今お腹がすいています」
「そうすか」
「でも一人で食べるのは寂しいです」
「そうすか」
「一緒に食べよう!」
「そうすか」

携帯を眺めながら適当に相づちをする。なんかイラっときたので携帯を取り上げると必然的にこちらを向いた。

「返してほしかったら俺と一緒にご飯を食べようか」
「このダメ人間……っ!!」

あらあら最近の若者は休日も知らなくて、舌打ちが癖で携帯中毒らしい。酷くなったものだ。
じぃーっと俺を睨むと自分のパーカーとズボンのポケットを漁りだしてそして何かを取り出して俺の胸につきつけた。

「これでも食っ…食べてろっす」
「敬語ヘタだね、正臣くん」
「うざい」

でもまぁ、貰ったものは頂いておこう、はい。けど手中に収まるほど小さいそれはくしゃくしゃな袋に入ったレモンの飴。こんなものでお腹いっぱいになるわけもないけど、貰ったものは以外省略。

「もしかして、誕生日プレゼント?」
「そうすけど?なにか?」

飴受け取った瞬間に隙をつかれて携帯を取り返される。

「…まぁありがとう」
「なんすかその不満そうな声。貰えただけでも奇跡なんすよ?殴りますよ?」
「正臣くん最近物騒だね」

と、言うのと同時に俺の携帯がバイブレーションでメールの新着を訴えた。
ドタチンからだ。

「じゃあ俺行くから変な人に絡まれないようね!」
「もう臨也さんに絡まれましたけどね。早くどっかいってくださいよ、あ。そういえば墓場に一歩近づきましたね、おめでとうっす」


これは、あれだろうか。
彼なりの祝福の言葉なのだろうか。それなりに素直に受け取っておこう。

小さいレモンの飴を口に含むと、ドタチンからのメール画面を開いた。




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