帝人くんと腐女子
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「名字さん?」
ひっと私は、驚きから酸素が絡まったうめき声をあげた。
「やっぱり名字さんだ。偶然だね」
「や、やあ竜ヶ崎くん!」
「竜ヶ峰だよ…」
息を潜めて臨也さんを追い掛けようと電信柱の影に隠れていた私の肩を叩いたのは、まさかの竜ヶ峰君だった。
まさかこの子が臨也さんとフラグを立てるなんてね…!名前さんハスハスだよ!
「こんな朝早くからどうしたの?そんな深い帽子被って」
「え、えへ!池袋の安全を守るパトロール!」
「名字さんが一番怪しいけどね」
うっと言葉につまる。可愛い笑顔見せながら中々鋭い言葉を!
私は深く被っていた帽子の鍔を少しだけ上に上げて、気持ち悪くへらへら笑う。
…あ、せっかくだしちょっとひっかけてみるか。
「ね、竜ヶ崎君。そのストラップ変わった形だね!」
「え、あ、これペアストラップなんだ」
ふふう、知っているぞ私は!なぜなら同じファミレスでずっと見ていたからな!臨帝ご馳走様です!
「へえー!まさか杏里と!?」
「違っ…これは、知り合いの人とだよ」
「知り合い?こいつう、杏里じゃ飽きたらず…!」
「わーわー!!男だからその人!!」
「正臣君?」
「違う!年上の知り合い!」
真っ赤になって慌てて否定する竜ヶ峰君を頂けたところで、私は満足した。鼻血が溢れそうな鼻を強く摘んで彼に別れを告げた。
可愛すぎる臨帝を頂けたところで、早く臨也さんを追い掛けなければ!
私は帽子を深く被り直し走り出した。