かわいーね(ジュリアデ) | ナノ




かわいーね(ジュリアデ)
おんなのこって、すんげー柔らかくて、良いニオイして、笑ったらにこって笑い返してくれて――。
ふわふわしてんだよな。そういう子すんげー大好き。

そんな子が好きなハズなんですけど、目の前にいる女の子は。

「ジュリー!夕飯までには帰ってきなさいって言ったでしょ!ご飯はみんなで食べるの。」
黙ってりゃあ、凛としてていい女なんだけどな。
オレの彼女、現在、阿修羅みたいな顔してんだけど。目ェ合ったら殺されそうなくらい睨まれましたァ。

普段なら、アーデルハイトと共に帰宅をするのだが、この日彼女はHRが終わるといそいそと教室を出て行った。
何かあるのだろうかとぼんやり思いつつ、背中を見送ってかわいー女の子たちとお喋り。
楽しんでいたら、夕食の18時はとうに過ぎていました。
そういえば、早く帰ってきてねと言っていた気がする。
話に夢中ですっかり忘れていた、言えない、この状況では。

慌てて帰った玄関先には、仁王立ちのアーデルハイト。試しににっこり笑ってみたら、ナックルでも仕込んでんじゃねェのってくらいドギツイパンチが返ってきた。
相変わらず容赦ない。
自業自得か?

ツウと垂れる紅い鼻血を拭って、アーデルハイトを見つめた。
「ちょっと過ぎただけだろ。浮気してねぇって。オレちん、アーデル一筋。一途です。」
「またどの口がそんなことを!」
火に油を注いだのか、ジュリーの言い方が宜しくなかったのか。アーデルハイトの額には無数の血管が浮き出て今にもブチ切れそうだった。

遅いゾ!おかえり!てへっ!なんてハグしてくれるかわいー女の子が大好きなハズなんですけど。
怒ることで自分に気持ちをぶつける彼女が、その怒りに狂った鬼みたいな顔さえも可愛らしく感じてしまって仕方ない。
オレ、重症。


束縛されんのはダイキライ。ふらふら生きて、まったりテキトーに楽しみたいんだよ。かわいーおんなのこと共に。
帰る場所は、アーデルの所だけどなんてのは都合がいいか。
「嘘じゃねぇ。きっつきつに縛らなくても逃げやしねぇっての。アーデルちゃん、そーゆープレイがお好き?」
はあっとわざとため息をついてしまった。視線を向けたら矢張り、何とも言えない寂しそうなアーデルハイト。
この表情が見たくて、ため息をわざと深く。
少し傷つきやすい所は、ウザったい。なんて、事は無くてすんげー可愛いんですけど。
今抱きしめたら、内臓やられっからやめとこう。


「アーデルになら、縛られても、殴られても、構わないんですケド。」
ご機嫌取りに顔を覗き込んだら、ちょっとだけ照れくさそう。
「!!片付かないから早くご飯食べて。」



あーね。オレがエビフライ食いたいって言ってたから、張り切って帰って作ったんだな。
一生懸命作ったんだろうなー。
意外と、乙女ですからアーデルちゃん。
そういうとこが可愛いっつーか、一途っつーか、こう抱きしめたくなるっつーか。

「アーデル、今晩どうですか?」
遠まわしになんて、めんどくさいので直球ストレート。
ブン殴られるかと思って方目つぶって自己防衛。けれども、直球なお誘いにアーデルハイトは照れてしまったのかそのパンチにキレはなく、ジュリーは難なく交わせた。
「ばか、やだ。しないわよ。」
「部屋で待ってるから、来いよ。」
顔を真っ赤にするアーデルハイトにそれ以上は言わなかった。
だって、必ず来るって分かっていたから。

「……ジュリー、開けて。したいからきたんじゃないわ。今日は、怒りすぎたから。気になったのよ!」
ほら、やーっぱり。
ふわふわしてないけど、やっぱ、オレの彼女はかわいーね。










2012/03/22