Trap×Trap@ Trap×Trap@ ジュリーに触れられた箇所が熱い。彼はいつも中途半端なところでやめてしまうのだ。 「これ以上したら、アーデルが怒っちまうよなー。おやすみ」 ぎゅうっと抱きしめあって、唇まで、もう少し、というところでいつもこれだ。 悶々とする気分を必死に抑えて、今日もまたジュリーからのぬくもりを待っていた。 普段ならば、寝る前に抱き合って、口づけ一歩手前というところなのだが今日は訳が違った。 「アーデル、おやすみ。」 ジュリーの声が聞こえて立ち上がるも、ドアも開けずに夜の挨拶だけ交わして去って行ったのだ。 毎夜の楽しみだったのに、と、アーデルらしくない憂いを表情に映してベッドへと入った。 「ジュリー、どうしたのかしら。」 柄にもなく、男を求めて深いため息をついた。 寂しい心を埋める術を知らずに、乾いた夜を過ごした。迎えた朝の日差しが、目に染み込む。 昨晩から、幾度目かの大きなため息をついた。 「おはよ。」 アーデルの心なんて、素知らぬふりをしたジュリーは、制服を着崩して大広間へとやってきた。 「おはよう。珍しく、早起きね。」 両手を上げて背伸びをするジュリーに、胸を高鳴らせつつ問いかける。二人きりならば、朝からでもくっついて抱きしめてくれるのだ。 「んー、たまにはなー。」 が、昨晩に続いてまたもやそっけない。ふいとそっぽを向かれて、アーデルは無意識に頬を膨らませる。 『抱きしめてくれないから、不機嫌になった』あまりにもらしくない。 ジュリーには知られたくなくて、慌てて顔を背けた。 「ばか、じゅりー。どうしたのよ、急に。」 ジュリーからの度重なるセクハラに、普段の様に殴ったりもしていたが、内心嬉しかった。 優しくて、暖かいぬくもりが本当に大好きだったのだ。 しかし、愛情表現がぱったりと消えてしまった。 たった一晩抱きしめてもらえないで、こんなになってしまうなんて。 己のうちのジュリーを求める女の部分が、歯がゆくて苦しい。苛立ってしまう気持ちを抑えられなかった。 民宿に帰っても、複雑な胸中は拭えずに、言葉の代わりに無意識のうちにジュリーを視線で追っていた。 食後の片づけも終わって、エプロンを外しているときにジュリーに声をかけられた。 「アーデルちゃん。」 「…っ!」 名を呼ばれただけなのに、胸が高鳴る。 「宿題手伝ってくれねーか?」 普段の不真面目極まりないジュリーからは想像できない、まともな発言に耳を疑った。 ジュリーが、あのジュリーが宿題をしていくだなんて、とても喜ばしいことなのだが、心のどこかで期待していた感情が裏切られたアーデルは落胆の色を浮かべて頷いた。 2011/10/22 To be continued |