ばかって言って(ジュリアデ) | ナノ

ばかって言って(ジュリアデ)


「アーデルちゃん、おっぱい触らせて」
眉を下げ、甘えた声音の唐突過ぎる懇願。
アーデルは拒絶の色を灯した瞳を向けて即座に冷たい口調で答えた。
「嫌よ。絶対に嫌!」
語気は荒々しく、本気で嫌がっていることが覗える。
その答えを待っていたかのように、ジュリーは小さく笑ってずれた片方のレンズを正しい位置へと押し上げる。
「なーんで、ちょっと触らせてくれたっていいでしょうが!」
「バカジュリー!嫌なものは嫌なの。」
この男は、一体いつもどういうつもりなのだろう。意図がわからない。分かりたくもないと心底不快そうなため息をついた。
「………。」
「………?」
数秒の間に、アーデルはきょとんとした。言い過ぎたのだろうかと、しかし、これくらいいつも言っている。
思考を巡らせていると、口端つりあげてた。
「いいねぇー。もっかい言って?」
「何を?」
「だーかーらー。分かってないねぇ。バカって言ってくれねぇ?」
仰々しくため息をつく様に、また一つ、冷たい視線を送る。
「なっ!ジュリーは本物ね。」
「まーね。」
「褒めてない!もういいわ。」
「あれ?バカっていわねぇの」
「ええ、言ってあげない。」
「どうして?」
「悦ぶから。私は怒ってるのに。反省しなさい。」
「はーい。」
気のない返事に、アーデルも再度ご立腹。冷酷に突き放した筈なのに、続ける声音と表情はどこか楽し気だ。
「もうっ!」
「……。」
「……。」
続く無言だが、先程の様に心配などしてやらない。思い切り顔を身体を逸らしてやった。
「なあ、アーデル?」
「なぁに?」
「怒った顔もやらしーね。」
可愛いね、ではなくて、やらしいね事いうところがまた彼らしい。
「!バカジュリー。」
顔を真っ赤にして、むうっと頬を膨らませて子供っぽい表情見せる彼女に、彼は緩く笑った。
「お、またいってくれた。ありがとね。」
「今日は、もう喋らない。」
「ごめんな?」
心の底からなんて、謝っていないくせに。けれども、この言葉に酷く弱いのだ。アーデルの心は怒りから遠のいた。

声には出さないが、そっぽ向いたアーデルは唇で彼の求める言葉を紡いだ。





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