DNA 「お疲れ様。作戦は成功だ。三日間、ゆっくり休んでおくように。」 作戦終了と共に、零組に戻ると仁王立ちのクラサメから労りの言葉と、モーグリからはメガポーションを貰った。 欲しいのは、これではない。 初めての作戦終了と、成功。 槍で人を突く感触が未だに手に残って震えている。喉奥と唇が渇いて、興奮が冷めないのが分かる。寧ろ、作戦終了と共に徐々に熱をはらんでいくのが分かった。 口元が動いて、クラサメが何かを言っているのだがナインの耳には届いていない。 「解散。」 この言葉を待っていた。零組の仲間を押しのけて、ナインが訪れた場所はエミナの元だった。 行先など考えておらず、刷り込まれているかのように真っ先に浮かんだのが、マザーではなくてエミナの顔だった。 迷うことなく向かった先に、彼女はいた。 「待ってたよ?お疲れ様。怪我は……っ。」 笑顔を見た瞬間に、どっと疲れが襲ってきた。まだまだやれると思っていたのに。 そして、浅かった呼吸は元通りになって大きく息を吸う。自分は、ここに生きて還ってこられたのだと、彼女を抱きしめて思う。 「ただいま。まだ興奮してんだ。」 モンスターとは異なる人の肉を切り裂く感触、やめてくれだとか、命だけはだとか泣いて必死に懇願する白虎の兵士を無残に槍で突いた。 戦争だから、仕方がないのだ。これが、マザーの願いだから、仕方がないのだ。 憎き白虎の兵士を殺したところで、自分は悪くない。だって、ずっと前から遺伝子に組み込まれている行動なのだから。 だけど、だけど、何かが違うような気がした。理由などは、全く分からないけれど。 「手、冷たいね。」 身体は滾るように熱くて仕方がないのに、ナインの手先だけが死人の様に冷たかった。 この興奮は、人を殺したというよりも、死と隣り合わせだったことへの畏怖かもしれない。 「あっためてくれねぇか?」 優秀な零組の人間などではなくて、エミナを求める姿はただの少年だった。 勿論、と、エミナは小さく呟いて、ナインの手を握りしめた。 彼女を求めることも、遺伝子にずっと前から組み込まれていたような気がする。 戦いの後に思うことは、いつも同じだった。 - - - - - - - - - - 2011/12/21 |