雌雄(キング×サイス/R18だと思う) | ナノ




雌雄(キング×サイス/R18だと思う)


獣の血腥いニオイが彼方此方から立ち込める森の奥深くで、向かい合う様に重なった男女は激しく腰を揺らしていた。

頭の上で結った銀の髪を解いて、女は男の名を呼ぶとその細く傷ついた腕を男の首に回してしがみつく。
胎内に埋まる太い男の熱によがって、淫らに腰を上下左右に揺さぶる。
双方からの体液により潤った結合部は、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てて水泡がそこに集まっていた。
もうずっと、繋がりっぱなしで女の内壁は擦れて赤くなっていた。
男の肉塊も、窮屈すぎる肉壁に収まったままで痛いくらいだった。
視界がぶれる合間に女は、男を見るが、視線がかち合ったことは一度もなかった。

「ッ、は、キングっ!」
どちらの熱か分からないくらいに結合部は熱くなって感覚が無い。奥深くの白濁が逆流して女の股を濡らす。
女は、男の背に爪を立てて背を弓なりに反らした。
男の腰に細い脚を絡み付けて、震えながら果てた。全身にゾクゾクと昇る快楽を目いっぱい感じて呼吸を整えていた。
背に力を入れて、印をつけるかのごとく男の背を強く引っかく。
ぴりっとした痛みが背を走ったが、男の快感がそれを上回っていた。
そんな女に容赦なく腰を打ち続けて、奥へと熱を解放した。

「血ィ見ると、あんたが欲しくなる」
誘うのはいつも女の方だった。何故、この男でなければならないかなんて分からなかったが、汚れた血を見るとこの男が欲しくなって全身が騒いだ。
男は、誘いに乗った。今まで一度も拒絶されたことは無い。
交わりも、心地よかった。
しかし、いつも何かが物足りなかった。
子宮を精液で満たしてはくれても、男は視線を重ねることはしてくなかった。
矢張り、今宵も。


「……ッ、ハァ……またあたしが先にイッたのかよ」
奥で熱を感じると、背はひんやりと冷えたように震えた。
そこで幾度目かの敗北を知る。ぐったりとした表情で、女は悔しそうに片目を瞑って睨んだ。
「何度しても、同じだ。気持ちよさそうな顔してイッてたぞ」
男の言葉に、女は噛みついた。
「嘘つけ。ヤッてる最中、あたしの顔見た事ねぇくせに。よく言うぜ」
繋がったままの箇所が激しく脈打って、それがダイレクトに伝わると女は腰を浮かせて結合を解いた。
どろりと白濁液が流れ落ちるその感触に、敏感な身体は反応して崩れ落ちそうになる。
男がそれに気づいて、女の細い体を抱きとめた。

「声で分かるものだ」
「……なんだそりゃ。適当な事言ってんじゃねぇぞ」
女の下肢はびっしょりで、男の欲がそこには纏わりついていた。女性ならば避妊具をつけない性行など妊娠を望む以外は喜ばしいことではないはず。
だが、銀髪の女は、胎内に欲を吐き出されることを望んで、避妊具を嫌った。
中に直接、欲を吐き出された方が男との行為をよりリアルに感じられるから。
男の愛し方も、ましてや恋をする感情なんて知らないその女には、善悪の区別がついていなかった。
目の前の、この男の熱を貪欲に欲しがっていた。


「サイス、脚を開け。掻きだしてやる」
女から垂れ落ちる臭気を帯びた液体に、嫌悪感を示した男は低い声で促した。
「必要ねぇよ。このままで良い」
女の頭に、妊娠するだとかそんな心配は一切無かった。
この独特のニオイだって、手放したくはない。出来ることならば、いつまでも腹にとどめておきたかった。

乱暴に放たれるこの感触が、微睡が心地いいのに。
この男は、一向に分かってはくれない。分かろうとしない上に、セックス中に視線を交わすことはしてくれない。
幾度となく交わっているのに。

視線を合わせないくせに、セックスの後は苦しいほどに優しく抱きしめてくれる。
それが、いつも哀しかった。

「そんな優しさ要らねぇから、抱いてるときくらいあたしの事をみろ」
人肌の心地良さにつられて、女は小さく呟いた。

男の声は、聞こえてこなかった。



2012/05/09