不真面目極まりないのです(キング×クイーン) | ナノ




不真面目極まりないのです(キング×クイーン)

「あなたまで残る必要はないわ」
誰が言ったわけでは無いのだが、クイーンはもうずっと前から0組の委員長的存在だ。
報告書の提出等、常に周りに気を遣ってその表情を緩めることは少ない。
頑張りすぎる所が長所でもある。

「傍にいるなという事か?」
クイーンの雑務が終わるまで、壁に寄りかかって窓外に生い茂る木々を見ていたキングはゆるりと眼球を動かして低く問いかけた。
「違います。退屈でしょう。無理して付き合ってくれなくていいですから」
この委員長、どこか素直さに欠けるところが有る。そこも含めてクイーンという存在なので否定する気もなく、キングはきちんと受け入れていた。
惚れた弱みでもあるのか、素直でないこの部分さえも、と。

「全く。寧ろ、心地良いくらいだ」
目を伏せて首を振って、口端を吊り上げると似つかわしくない言葉を零した。
「毎日、居残りに付き合ってくれて、変わった方ね」
プリントの束を机の上で、とんとんっと叩いて整えるとため息の後に吐き捨てた。一見、冷たい素振りを見せるクイーンだったが、内心は照れくさくて嬉しくて仕方が無い。
素っ気ない態度をとっても変わらずにいてくれるキングだからこそ、クイーンもついついこういう甘え方をしてしまっていた。
その様子は、眼鏡の奥の優しく落ちた目尻からも窺えた。
クイーンの仕事が終わったと察したキングは、腕を解いて一歩と近づく。

「終わったか。お疲れ様」
「ええ、さっ、帰りましょう。寮に戻らないと」
下がる眼鏡を指先で上げて、クイーンは席を立った。そして、細腕をキングに掴まれた。
数秒見つめ合って、キングの視線がクイーンの唇へと落ちる。その次の行動をクイーンは知っていたが、拒むことなどしなかった。
唇が重なるまで息を呑んで待つ。キングの唇が開いて、吐息がかかるほどに近づく。
うっとりとした女の表情で待っていた。
もう少し、しかし、待てど、そのもう少しが来なかった。
期待に反して、彼の唇が遠のいていく。

「……期待したか?」
唇を逸らして、一歩遠のいたキングは楽しげに口端を緩めて笑う。
勿論、口づけだってしたいのだが、キングが一番見たかったのはクイーンが己を求める顔。
思う以上に淫らな表情が見られて、満足していた。
「ッ。からかうなんて悪趣味よ」
一方、クイーンは満たされずにもどかしさでいっぱいだった。
不満を露わにしている。
キングを睨んで、両腕を組んで拗ねて見せた。

「すまん」
「許してあげないわ」
「これで許せ」
キングの武骨な指がクイーンの柔らかい唇を象る。二度目の揶揄に、またとお怒りに頬も膨らみかけていた刹那、そこを覆ったのは生暖かさだった。
自然と開くクイーンの唇に、暖かいキングの舌が這ってゆっくりと挿入されていく。異物が咥内を駆け回る感触に、クイーンの背はゾクリを震えた。

「ぁっ、ンンっ、キン……ぐ」
キングもまた、絡み合う舌に興奮して小さな咥内を心行くまで堪能した。
ぴちゃりと水音が絡み合って、荒い息遣いが教室内に響く。
教室に、二人だけど思っているから出来る行為。

「きゃあっっ!」
交わる水音が響いて、夢中になって舌を貪っていると聞きなれた声が重なる吐息の合間に聞こえてきた。
舌の交わりを解いて、二人が向けた視線の先には真っ赤になって真っ青になるデュースの姿。
「ご、ごめんなさい!!!」
大声で謝られて言い訳をする間もなく、デュースは嵐の様に二人の視界から消えた。

「見られたか」
焦るわけでもなく、キングは事実を呟きた。
「どうしましょう……っ、また…も」
クイーンは、僅かに動揺した。
扉の向こうに視線を向けたままのクイーンの顎を掴んで、顔も意識もこちらに向けるとキスの続きをとクイーンの口端に垂れる唾液を舐めた。
「終わってから考えればいい」
キスを見られたことなどキングにとっては、大したことではなかった。
ただ、クイーンとの仲が仲間を超えたものであるということを報せただけのこと。
其れよりも、この先の快楽を欲するのと、クイーンの淫らな顔が見たいという本能だけで行動していた。

「……最後までするつもりですか?」
痛いくらいの口づけの後に、キングの胸板に寄りかかって紅い顔で問いかけた。
周りの酸素を吸い込んで、キングの頬に手を添える。
ここは教室だと、クイーンは視線で教えた。
「何か問題でもあるのか?」
キングの手は、既にクイーンのスカートの中へと侵入していた。
熱い手が内股に触れると、クイーンの背が粟立つ。カラダが、キングの熱に期待して反応する。

「こんなところで……、不真面目極まりないわ」
クイーンは息を荒げて、快楽に浸りかけて呟いた。
生真面目に言葉を残すのだが、その心は逞しい胸板に、欲情してしまっていた。

「不真面目な俺に付き合ってくれ。真面目なクイーンなら出来るだろ?」
不埒であるのは自分だけだと耳打ちして。クイーンは、何も悪くないのだと伝えた。

「こんなところで、キングを欲しがるわたくしの方が不真面目よ」
クイーンは舌を出して、自ら唇を重ねた。

ぼんやりと朱の差し込む教室で、行為に及んだ。


2012/05/08