toy boy&play girl(エース×シンク) | ナノ




toy boy&play girl(エース×シンク)


壊れてしまうのではないだろうかというくらいに、男子寮はけたたましい音を響かせて開けられた。
「ひまー。あそぼー。」
明るい声音でやってきたシンクの声に、エースの片眉は僅かに上がるだけで課題を進めるペン先の動きは止まらなかった。
「これが終わってからな。」
表情は変わらぬものの、エースの声音は優しく響く。
机に向かうエースの顔を覗き込んで、緩く口端を釣り上げる。何を思ったかシンクはエースの後ろに回ってまだ成長途中ともいえるその背中にぎゅうっと胸を押し付けて抱きついた。

「終わるまでまてなぁ〜い。」
早く、早くと急かしては子供の様に甘えてみせる。
「すぐに終わる。」
シンクの柔らかい頬がエースの首筋に触れる。その度に、冷静な表情も壊れてしまいそうだった。
はぁいと気の抜けた返事が返ってきたのも束の間、ぬくもりが離れた。
向かい合わせのナインのほとんど使われてない勉強机に向かったかと思いきや椅子を引きずってエースの隣に持っていく。
どんっと置かれたそれに座り込んで、膝をついてエースを見つめた。
至近距離で観察されて、問題を解くペースが遅くなる。
すぐにと言われ、素直に待っていたシンクだったが、矢張り、大人しく待てなど出来ない。
退屈さを逃がす様に横髪を指に巻いて遊んだり、小さな欠伸をしていたのだが、堪えきれずにちろりと隣の少年に視線を向けた。


「エース、こっち向いて?」
優しく、甘い声に誘われて振り返ったら――。
少女の顔が、吐息がかかるほどに近い。
「ふふっ、ちゅうされるかと思った?」
てっきり口づけでもくれるのかと思いきや、シンクの指がエースの唇に押し付けられただけに止まった。
冷静な表情をしていても、エースだって男の子。期待くらいする。それが裏切られてしまえば、あからさまに残念そうな表情をしてペン先をノートに押し付けた。
その様子が可笑しくて、シンクは小さく笑う。
口を開けば、またきっと揶揄されるのだろう。もったいぶられることなど、付き合いの長いエースには分かっていた。
ならば、と、言葉よりも先に行動に移した。


掴んだのは細い腕。顔に似合わずに意外と強い握力にシンクはびくりと固まる。気を取られていると押し付けられたのは唇。
勿論、抵抗などするつもりもなくて薄く開いた唇から熱い舌を迎えた。

「ふっ……っんぅ。」
エースのキスは少し独特で、歯列を一度舌先で舐めてから生暖かい舌を絡めて強く吸い上げる。
ねっとりと咥内を楽しむのが好きな男なのだ。
置いて行かれない様にと、シンクは前のめりになってエースの舌を追いかけた。
咥内が蕩けてしまいそうで、交わる唾液がどちらのものかは分からない。
エースの胸板に手を当てると、男の腕が括れた腰元に回って強く抱きしめる。

息継ぎの為に唇を離して、二人は浅く荒い呼吸を繰り返した。
そして、見つめ合って笑う。
足りないもう一度、と唇を重ねようと顔を近づけるがシンクの人差し指が押し付けられて阻まれた。

「……ッ!」
「だぁめ。あと一問残ってるよ?それ終わってからー!」
意外と見ている。焦らし上手。

誘ってきたのはシンクの癖に、喉元まで出かかった言葉を飲み込んで渋々頷くと唇に当たる指先を舐めた。
向けるのは、欲情を孕んだ視線。


「シンクちゃん、エースのキ澄ましたキレイな顔よりも、そーゆーえっちな顔のが好きだなぁ。」

愉しげな表情に潜む女の真意は見えないが、今日もとことんまでに振り回されることは言うまでもなく予測できた。

無邪気な少女、基、女にとことん弄ばれてやろうと心の中で誓って未回答の問題に取り掛かった。




2012/04/19