造花(エース+アレシア) | ナノ

造花(エース+アレシア)



危険度の高い極秘任務。危なければ、危ないほどに心の揺さぶられるミッションにクラス0の12人の血は騒いでいた。
緊張を凌駕するのは、この手で皇国兵を蹂躙できるという愉悦感。どうして、ここまで皇国兵を憎めるのかは知らない。
疑問も抱かずに、遂行できるのはマザーの命であるから。
彼女に褒めてもらいたいから、ただそれだけで迷いもなくファントマをその手に迎える。

どうして、こんなにも彼女を崇拝できるのか、それは誰にもわからない。



実践演習は幾つも行っているのだが、敵を滅した時の不快感はいつまでも残る。
声が、空気が、嫌な名残がエースを纏っていた。
助けてくれと、この手で潰した男の声が蘇る。

「エース、お帰りなさい。よくやったわ。」
アレシアの部屋の扉を開けると、笑顔で迎えられた。
誰に褒められるよりも、どんな祝辞の言葉を貰うよりも、お帰りなさい。の言葉が何よりも嬉しい。

それだけでエースは嬉しかった。木霊する皇国兵の悲痛な声がアレシアの優しい声に塗り替えられる。
こびりついた臭気も、体温されも拭ってしまうアレシアの声にはあった。
そうして、漸く心身ともに落ち着きを取り戻す。

「マザー、これ好きなの?」
与えられる温もりを目を閉じて感じた。瞼が開くと朱が視界を覆った。
殺風景な室内に置かれた朱い花。花の名前までは分からない。けれども、とても興味深い。
近づいてみると、偽物で有ることに気が付いた。
生き生きと、力強くあるようで、本当はとても脆いものだとそう思った。

「ええ。手入れが不要で助かるの。」
アレシアの指先が花弁に触れて、ゆっくりと愛でる様に撫ぜる。
その花に向ける視線をどこかで見たことがあった。
ああ、そうなんだ。


「僕たちみたいだ。」

主に厭きられるまで、腐ることなく生き続ける造花へ向けて。




2012/03/27

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