反撃開始 ナインは、本能で理解していた。目の前の、艶やかな装いの女性に手の上で転がされているということを。 無意識なのか意識的なのかは定かではないけれど。 恋人同士と確かな関係を結んでいるわけでもないが、ナインはエミナの元に度々通っていた。 うっすらとでは有るが、ナインの気持ちはエミナへと伝わっていた。 拒まれているわけでは無いが、受け入れられているとも言い難い曖昧な関係。完全に、エミナの掌にころんと乗っかっている状態。 モノにしたいのに、なかなかできない。 ナインの気持ちをうまーく交わしつつ、エミナはぴったりと腕にくっついた。 柔らかい胸がナインの腕に当たる。思わせぶりなその行動に、ナインはぴくりと反応した。 「みてみて、新しい水着買ったの!似合うかなぁ。」 その様子に気づいたのか、一歩距離を取ると服の上から黒のビキニを当てて、にっこり問いかけた。 「エミナせんせぇなら、なんでも似合うだろ。」 金糸をくしゃくしゃとわざとらしいくらいに掻き乱してぶっきらぼうに答える。 素直で何とも少年らしい反応に、口端が緩むことを許してしまう。目の前の大きな少年を抱きしめて、髪をぐっしゃぐしゃに掻き乱したい気持ちを必死に抑える。 可愛いと、心の中で呟いてそっぽ向くナインの顔を覗き込んだ。 「ありがとー。ナインくんには、一足先にお披露目しよっかな〜。」 首を傾げると同時にエミナの纏めた柔らかな髪と、はちきれそうな豊満な胸が悩ましげに揺れる。勿論、ナインは見逃してなどいなくて、揺れ動く胸に視線は一点集中。 目を見開いて、飲み込むのは生唾と卑猥な妄想。 エミナの水着姿も想像して、思春期少年らしく下肢が悦ぶ。熱が籠らないようにと、わざとらしく両足を動かした。 「なぁーに、見てるのかな?」 ナインの反応が可愛らしくて、分かっているのにわざとらしく問いかける。 素直でない少年の反応が、何となく想像できてエミナは小さく笑った。 「な、なんも見てねぇぞ、コラァ!」 ほらね、やっぱりとエミナに言われているような気がする。 まるで男だと意識していないその態度も悔しい。 揶揄、けれど嫌ではないそれに唇を尖がらせた。 「……怒っちゃったー?ごめんね。」 面白がられているのが分かる。年上の余裕なのか、エミナの口端にいつも笑みが溢れているのが気にくわなかった。 と言っても、惚れた女性が己の前でいつだって笑ってくれているのは喜ばしいことなのだが、たまには慌てふためく姿だって、紅くなる顔だって、怒った顔だって、困った顔も。 喜怒哀楽全てをこの目で拝見したいもの。 からかわれているのは、ナイン。 その反応を見て、楽しむエミナ。 出来上がったこの関係を崩してしまいたかった。 「そのよゆーな態度、面白くねぇ。」 「!」 「からかい過ぎだ。犯すぞ、コラァ!」 背を向けて歩くエミナの背中を後ろからぎゅうっと抱きしめた。思っていた以上に小さくて、柔らかくて暖かい。 衣服越しからでも分かる豊満な胸を谷間でなぞって挑発してみた。 「んっ……ナインくんに、出来るかなぁ?」 見上げられたその瞳も、こんな状況になっていても転がされているような気がした。 「言ったな。このエロいカラダ、貪ってやっから。」 抵抗するものだと思い込んでいたナインは、拍子抜けしてしまった。 荒い言葉でモノにしてやる!と叫んでいるのに、エミナの表情は余裕そのもの。 「いいよ。ナインくんのモノにして。」 谷間を這うナインの指先を優しく包んで、自分の指先と絡めると右胸へと招いた。 「よゆーの表情、崩してやる。」 エミナの首筋に顎を置いて、掠れた声で囁いた。 余裕のその表情は、未だ崩せなかったけれど、反撃開始とエミナの頬を舌先でねっとりと舐めあげた。 2012/03/22 |