小ネタ(クラサメ×エミナ+カヅサ) IN クラサメ宅 「クラサメくん、COMMの機種変したんだ。」 テーブルに放置された真新しいCOMMを片手に、様々な角度から眺めた。 「先日、な。まだ慣れていないんだ。」 「へぇー、触ってもイイ?女の子の連絡先とか入ってたら、怒っちゃうよ〜。」 ぐりぐりとクラサメの頬に指を埋めて、冗談交じりに笑う。 「エミナと、0組の連絡先くらいしか入っていない。」 有り得ないと大きなため息をつくクラサメは、寛ぐ恋人を横目に頬に埋まる指を掴んで離すと、日課のトンベリの包丁研ぎに勤しんでいた。 「うそうそ、浮気できない、じゃなくてしないって知ってるモン。」 相も変わらずに真面目で、お堅い返答が彼らしくて緩む表情を抑えきれずに声音を弾ませて指先で画面に触れる。 触れていただけなのだが、誤って表示されたものはアドレス帳。 恋人といえど、勝手にCOMMの中身を見るのはいけないことだと思っていたエミナだったが、自分の名がどのように登録されているのかが気になった。 見えた登録名に思わず胸がきゅんっとなった。 えみな・はなはる(恋人) 両縁をちっさなハートの絵文字で囲んでいた。 「や、やだ、クラサメくん、かわいい!!」 クラサメにこんな一面があるなんて! ころんと横になって、心の中で騒いでいると、メール受信中との表記。 差出人の名を見て穏やかに笑った。 「愛しのカヅサからメールきたよ。」 「またか……愛しくもないし、見なくても大体内容が分かる。」 振り向くことなく淡々と返せば、シュッシュッと包丁の研ぐ音が響く。 「酷いナ。……わっ、メール開いちゃった。」 =================== From カヅサ・フタヒト 『クラサメくーん、ご機嫌如何? 一晩、カラダ貸してくれないかな。 一回、1000000ギルでどうかな?』 =================== 「わー、カヅサからのお誘いメール。」 0が幾つあるのか目をよーく凝らして何度か瞬きをする。 少しだけ、悪戯心が疼いて、返信ボタンを押してみた。 『分かった。付き合おう。明日の夜、カヅサの研究室で待つ』 と、指先が動いて送信ボタンまで押してしまった。 30秒後に即返信メール。 =================== From カヅサ・フタヒト 『――――(゚∀゚)―――――― やっとだね。しつこくしたかいがあったよ。 エミナ君には内緒にしておくから。ああ、シャワーとか浴びてこなくていいからね。 待ってるよ、クラサメ君(はぁと)』 「ど、どうしよ。カヅサ、本気なんだ……。」 メールを開いてみて、エミナは酷く焦った。 小さな悪戯が、大事になってしまった。 大事な同期を裏切るわけにはいかないけれど、大切な恋人を奪われる訳にもいかない。 冷や汗は出るものの、クラサメならばなんとか乗り切ってくれると自分に言い聞かせることにした。 包丁研ぎに精を出すクラサメの背を見つめるとふらふらと立ち上がって、その背にぎゅっと抱きついた。 「クラサメくん……、今夜はワタシのこと、好きにしていいから……明日は、頑張ってネ。」 「………!」 カヅサとエミナのやりとりなどまるで知らないクラサメは、甘いお誘いに心音を高鳴らせる。 言葉に意味は分からないクラサメだったが、お言葉に甘えることにして一晩じっくりと楽しんだ。 本当に、いろいろさせてもらった。 そして、翌日の事は―――。 カヅサしか知らない。 2012/03/16 |