真夜中だけの関係(ジャック×シンク) | ナノ




真夜中だけの関係(ジャック×シンク)


「シンクちゃん、眠れなーい。」
極秘ミッション遂行中で在るが故か、普段ならばベッドに潜り込んだだけで就寝という非常に寝つきのよろしいシンクだったが、今日は違う。
幾度となく皇国兵を、この手で嬲ったせいか、ファントマを吸収したせいか、胸奥が、下肢が熱を持っている。
ベッドの中でむずむずと動いて蔓延る熱を追い払おうとするが、騒ぐ芯を抑えることが出来ない。
睡魔が訪れるのは、まだまだかかりそうだとはあっと大きなため息をつくとベッドから降りた。
この熱を、沈めてくれるのは、昔から彼一人だけ。

三人で遂行中のミッション。
メンバーは、シンク、レム、そして――。
「遊びに行っちゃおう〜。」
同じ雰囲気を醸し出す人物を思い浮かべて、ゆるりと口端を上げる。
隣ですやすやと眠るレムの寝顔に、ふ、と小さく笑って起こさないようにと忍び足で部屋を抜け出た。



冷たい廊下を小走りで駆け抜けると、彼の部屋の前で深呼吸を数回。そして、数回ノックして、反応を待つ。
「じゃっくぅ〜。起きてるぅ〜??」
その間も、ひんやりとした深夜の風が身体を巡ってぶるりと身を縮めた。
なんとなく、いえ、きっと。
同じ感性の持ち主だからか、彼も退屈で眠れない夜を過ごしているという自信は、あった。
説明できるものでは無いけれど。

「……シンク。」
ベッドから降りる音と緩く優しい声音が聞こえて、シンクの肩もぴくりと上がって開かれる扉の先を見つめた。
「こんばんは〜、ねぇねぇ、もう眠い?」
現れた人物に、笑みを向けると甘えたような声音で問いかける。
「ぜんっぜん。なぁんか、寝れないんだよね〜。」
ジャックの返答に、シンクはやっぱりと、小さく笑った。

「ねぇねぇ、遊ぶ?」
後ろ手に手を組んで、顔を覗き込むシンクの表情はどこか幼い。
「何して?」
シンクが何を望んでいるのは、理解しきっているのだが知らない振りをしておどけてみた。
「えっちなこと、しよ〜。」
幼い笑みが、艶めいたものに変わると、その瞳に強く惹き付けられた。

「気持ちよくなれることしよっかぁ。シンク、おいで。」
腕を差し出すと、シンクは喜んで絡み付く。

「うん。眠くなるまでしよ〜。」
温もりが物足りないと、ジャックの胸板に顔を埋めた。
「――好きだねぇ、僕たち。恋人同士じゃないのにね。」

求めるのは、繋ぐのは、心よりも先にカラダ。

「……じゃあ、なっちゃう?」

真夜中だけのこの関係。

この関係に、愛は無い。

と、思っていた。


2012/03/16