年上彼女の振り回し方(ナイン×エミナ) | ナノ




年上彼女の振り回し方

余裕のある年上彼女に翻弄されまくりの日々も、なかなか悪くは無かったがたまには、翻弄してみたいとナインはこっそりと思っていた。
焦って、余裕のないエミナだって見てたい。
燻る熱を抑えられずに、背もたれを前にして非常にお行儀悪く座って背凭れを抱きしめて傍に立つエミナを見上げた。

「おいコラ!も、もし俺がいなくなったらどうすんだ、コラ。」
興味本位の問いかけ。期待する答えは幾つも有る。そのうちの一つくらいは出てくるだろうと、期待に胸を膨らませていた。

「うーん。どうしよっかなぁ。うーんと。」
唇に人差し指を当てて小首を傾げてやんわりと微笑むその姿に、焦りなど見えない。
というよりも、エミナ自身もナインが隣にいない現実など想定出来なかった為に、その質問さえもまるで現実味を帯びていないように感じられた。
考えることすら無駄な事のようなものに感じて曖昧に交わす。

「いなくなったらサミシイとかねぇのかよ。」
「無いよ。」
間髪入れずに即答されてしまっては、流石にへこんでしまいそう。
欲しかった言葉は貰えずに、紡がれた言葉がいてもいなくても同じと、心で言われているような気さえする。ナインは、目を丸めてエミナを見つめた。
声音に悪びれは見えずに、優しい瞳が向けられる。
押して押して押しまくって、付き合い始めたものだから、この関係は同情なのかと正したくなった。
それとも、自分でなくとも男はたくさんいるとでも言いたいのか、至らないことがナインの脳内を駆け巡って声に出た。

「何だよ、それ、やっぱり義理で付き合ってんのかよ、コラァ!」
思った事を噛み砕いて零す余裕もなくて、ストレートな視線をぶつける。
余裕のないエミナを見る筈だったのに、ナインの方が大幅に焦ってしまっていた。
背凭れに手をつき椅子の上に乗って抗議の声を上げるナインに、首を大きく横に振って否定した。

「あのね。最後まで聞いてくれるかな。ずっと傍にいてくれるような気がするから。いなくなるなんて考えられないから、サミシイとかって、感じることがないんだよ。」
分かってくれるかな?と耳元で囁かれてしまっては、成す術もなく頷くしか出来なかった。
「ワタシには、キミしかいないんだから。ずっと傍にいてくれるんだよね?」
「今更分かり切った事聞くんじゃねぇぞ、コラ!……アンタには俺しかいねぇんだから、いてやるぞ。」
「ありがと。嬉しいナ。」


「ズリ―女。でも、好きだから、どうしようもねぇ。」
落ち着き取り戻したナインは、椅子の上に膝をついてエミナと視線を重ねる。
矢張り、翻弄されるのは自分の方だと眉を寄せて、大きなため息を。
「同じだネ。ワタシも、好きだからどうしようもないよ。お互い困ったねぇ。」

「よゆーのその顔、いつか崩してやんぜ。」
振り回してやるぜ!と、心に誓った。
「はーい。楽しみにしてるからネ。」
ナインの様子に楽しげに笑って、指先でグリグリと眉間の皺を解すその表情には大人のオンナの余裕が見えた。


完敗だと思う。

けれでも、完敗宣言は、まだ当分はしてやらない。

年上彼女の振り回し方、現在模索中。




2012/01/04