ケイトの恋愛支援ver.1(クラエミ) | ナノ




ケイトの恋愛支援ver.1(クラエミ)



ケイトの現在進行形のお楽しみは、クラサメとエミナの恋愛事情であった。

些細な事では動じないクラサメの表情も、エミナの事となると一味違うように感じた。
他の、零組の仲間は気付いていないのだろうが、ケイトはいち早くクラサメの心情の変化に気付いていた。
戦闘に関しては、花丸100点をつけられるのだが、堅物な隊長は恋愛やら女性の気持ちを察するのはマイナス100点の赤点常習者である、と、クラサメを逐一観察していたケイトは思っていた。
焦れったいのだが、何だか巧いこと言ってほしい二人なのである。
進まぬ二人の色恋に、ケイトはため息をつくと同時に何とかしてやろうと意気込んでいた。

思い立ったが吉日。
冷気魔法入門Vなんてそっちのけで、じいっとクラサメを睨みつけていた。
「アタシが言うのもなんですが!このままでいくと他の男に獲られちゃうよ?」
講義の終わる鐘の音が教室に響くと、ケイトは立ち上がって足早に教壇へと向かう。立ちはだかるのは、小さなトンベリ。
珍しくお愛想よく笑って見せて、己が隊長にもにっこりと笑って見せて、ずっしり重い言葉の槍をぶつけた。
否、クラサメはケイトを一瞥するも表情を変えずにいた。

予想通りと、ケイトは教壇に手をついて続ける。その勢いにトンベリの包丁がぴくっと動いた。
「エミナせんせい。人気あるもん。ほら!新しく入ってきたおっとこまえな白虎のおにーさんもエミナせんせいのこと狙ってるって言ってたし!」
先月、赴任してきたその男はクラサメと張る位の端正な顔の持ち主。白虎から引き抜かれた期待の新鋭。
年齢も、クラサメとそう変わらない。
一つだけ違う点が。
白虎の彼は、欲しいものは、きっと力づくでも手に入れる。ケイトの分析から、そう導き出した。

「いらん世話だ。帰ってしっかり補習をするように。」
一瞬、クラサメの眉が上がったがそれはすぐに元に戻されて普段通りの声音が零れる。
それでも、ケイトは続けた。
「今日も、ご飯に誘われてたしー。流石に、断れない感じだったから今日は危ないかも。」
だから、奪われないうちに抱きしめて大告白でもしてみれば?と、言いたかったが唇に手を当てて抑えた。

「……私は、ただの同期だ。それ以上でも、以下でもない。」
間違っていない関係性。しかし、そんなつまらない解答は不要。
自分の気持ちを殺しているように見える隊長に眉を寄せて、焦れったさを訴えるケイトだったが、教科書を片付けるクラサメの手捌きがいつも以上に早いことに気付いた。
足早に零組を出て、向かう先はテラスにいる彼の人の元なのだろうと推測は出来た。

「うーん、今よりは0.5歩くらいは進んでくれたらいいけど。」
奥手というか、恋情に素直ではないクラサメを思って一人笑う。

多くを語らないクラサメの眺めて、腰に手を当てて呟いた。


2011/12/31