一護の広い胸板を背凭れにして、暖かいココアを飲んで過ごす至福の時に、織姫は頬を緩めていた。
しあわせだなぁ。と、ぼんやり思っていると、BGMとしてつけていたテレビ画面の向こうでは面白い言葉が飛びかっていた。
2月22日。
にゃんにゃんにゃん。の日。
「可愛いね。猫ちゃんの日かぁ。にゃんっ!とか、言ってみちゃったりして」
声高々に、しあわせモード全開で言ってしまった。
一護からの反応がないと、見上げると驚きの声をあげて固まっている。
「えっ?!」
(なんだよ、にゃんって、めちゃくちゃ可愛すぎんだろ。マジでもっかい聞きてえんだけど。織姫が猫になったら間違いなく可愛いだろ。あー、飼いたいとか思うのはヘンタイなのか?やべえのか?)
「えっ?!」
(変な事いっちゃった。引かれてるよ。言わなきゃよかった。言わなきゃ良かった。あたしのばか(;ω;))
しょぼんとする織姫に、妙な興奮を覚えた一護は下半身の居心地の悪さに眉間に皺を寄せた。
沈黙が気まずい。この嫌な雰囲気を変えなければ。
「変なこと言っちゃったー!わすれて、ね、わすれてね」
一護のシャツをきゅっと握って眉を下げて、懇願する様に、もうメロメロだった。
「忘れらんねえよ」
「〜〜〜!!!」
ぽそりと聞こえた声に、織姫の羞恥心は一番深いところまでいった。
顔を真っ赤にして、一護の胸板に顔を埋めて小さく身悶える。
言わなきゃよかった。大後悔。一生の恥。戻せるものなら、数分前に戻してください。心の中で何度も願った。
織姫の心情を知らぬ一護は、全ての言葉と行動を含めて、可愛すぎるので全力で愛でたいと思っていた。
「いや、そんなに恥ずかしがらなくていいだろ。むちゃくちゃ可愛すぎて驚いたんだよ。織姫にゃんこもっとみたい。つか、聞きたい」
むちゃくちゃ力を入れてフォローしたが、
「もっと恥ずかしくなってきた!そんな事、言わないで!」
織姫には、逆効果でさらに頬を真っ赤にして涙目になっていた。若干、パニックになっている。
「なんでだよっ!」
「か、かわいいとか、そういうのは、黒崎くんの口から言ってもらえるなんて、ちょっともう頭、おかしくなっちゃいそうだから。やめて」
「そういうところがな、織姫のいいところなんだよ。あー、ダメだ。めちゃくちゃにしたくなってきた。違うにゃんが聞きたくなった。つーか、聞く。理性飛んだ」
「黒崎くんがにゃんって言った。かわいい……」
「……そこは、いいから……」
発情した雄猫のような一護に、本気でしっかりにゃんにゃんさせられた甘い一日でした。
2019/02/25
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