恋情、慕情 | ナノ




恋情、慕情


エミナの柔らかな乳房の感触が胸板に染みついたのは、放課後の事だった。

テラスで他愛もないお喋りをして、陽も落ちてきたので名残惜しいが帰宅という流れになった時だった。
テラスで待ち合わせでもしていたカップルなのであろうか、男子生徒が待たせている女子生徒の元に駆け寄った時にエミナに勢いよくぶつかった。
よろけるエミナを支えようと、ナインは胸元に強く抱きしめてしまった。腕に残ったのは、想像以上に柔らかい感触。
「あ……ッ、ごめんね。」
すまなそうに見上げられると、思い切り顔を逸らした。
女の優しい匂いに、雄が反応してしまいそうになる。
「アァン?アンタが悪い訳じゃねぇぞ、コラァッ!」
染みついた口調がナインの身を助ける形となった。かつてないほどに高鳴る心音と身体が触れ合うことで見える動揺を隠せたような気がしたから。
それから、エミナが何か言っていたのだが、ナインの耳には全く入っていなかった。
後に続くのは、湧き上がる欲情だけ。

エミナと離れるまで、下半身が疼いて疼いてどうにかなってしまいそうだった。間抜けに、勃起なんてしなくて良かったと、ナインは心底思って安堵のため息をつく。
確実に、我慢汁で下着げべっとりと汚れているであろうことくらい安易に想像できた。
「あー、畜生ッ、ムラムラするのが止まんねぇぜ!」
抑えようと思うほどに、大きくなる雄の肉塊。
ベッドに腰を掛けると、ため息ついて膨張する陰茎を慰めようとベルトを緩めた。

肉棒が外界に晒されると、始まるのは自分勝手なマスターベーション。

オカズになんてしたくないのだけれど、自慰の時は必ずと言っていいほどに彼女を抱いてしまう。
柔らかい感触をもっとと強請って、ぷくりと色艶の良い唇にしゃぶりついて、その乳房に吸い付くことを頭の中で鮮やかにイメージする。
その次に、脳内でエミナが自分だけを見つめて、甘い声でひっきりなしに鳴くのを想像すれば、性的興奮は高まってもう完璧。
スラックスに収まっているのが苦しいくらいに、ペニスはガチガチに勃起を始めた。

腹の底からずくずくと湧き上がる欲情に勝てずに、己の骨ばった手を男性器へと這わせて緩く握る。この手が、エミナのモノならばと何度思ったことか。
エミナの女らしい柔らかい手だと思い込んで、竿を強く握りしめてに手を揺らす。昨晩も、エミナを想って手淫したばかりだというのに、ペニスはパンパンに痛いくらいに腫れ上がって亀頭からはとろりとした先走り汁が引っ切りなしに流れていた。
己の右手だが、矢張り、気持ちがいい。
「ッ、は、ァ……、エ、みな……。」
愛しい女性の名を呼んで、妄想の中で激しく犯して、この腕に強く抱いて、悶える彼女を想像して独り快楽によがった。
上下に激しくすりあげるだけでは物足りないと、垂れさがった袋も片手で掴んでやわやわと揉みしだいた。
すぐにイキそうになるのを下腹に力を入れて止めると、指先で裏筋を行ったり来たりさせて、じっとりとした快楽を竿全体にもたらす。
鈴口から垂れる我慢汁を纏わせて、滑りをよくしてから強めに扱いた。
たまに根元も扱いて射精感を抑える。イきたいのにイけないこのもどかしい快感が、ナインはたまらなく好きだった。
カリに近い部分にも指で刺激を与え、ぐちゃぐちゃに濡れた鈴口にも爪先を押し付けて刺激を与える。内股がぶるりと震えてペニスの周辺全体が快楽に染まっていた。
合間に、エミナの感じる顔と、甘い嬌声、苦しそうに己の名を呼び姿を想像すると、AVをみてオナニーするよりも何十倍も気持ちが良かった。
指全体を赤黒く変色する肉棒に押し付けて、激しく上下に動かす。もっと、乱れるエミナの姿を想像していたかったが、どうにも我慢できない。
指が竿に滑る度にぐちゅりと卑猥な水音を響かせて、ナインは荒々しく乱雑に竿と袋を揉みしだいた。
まだまだエミナの乱れる姿を想像していたかったのだが、襲いくる射精感からは、逃れられない。
裏筋へ刺激を施していたせいか、快楽が間近に迫りくる。
「ッ、えみ、……くっ!」
イク前に、エミナに名を呼ばれることを想像してペニスをぎゅうっと掴んで前屈みになると小さく唸って絶頂を迎えた。
先端からとぷりと濃くて熱い精液を吐き出した。掌から零れ落ちて内股を濡らしていく。
「はァ……ッ、は、ァ。」
荒い呼吸の中で、淫らな白濁液を眺めてベッドに背を預けた。
行う秘め事は虚しさ際立って、されど憎いくらいの快楽をもたらしてくれるもの。
刹那的な快楽では、物足りない。彼女をこの手に抱けたのならばどんなに気持ちいいのだろうか。
きっとそれは、想像以上。
エミナを想えば、精液でぐちょぐちょに濡れて萎えたはずのペニスも瞬く間に起き上がる。
「だっせェ。また勃っちまったのかよ。いい加減、エミナせんせぇ抱きてぇ。」
譫言のようにぼやくナインの手は無意識にペニスへと向かっていた。

エミナでオナニーしてしまった罪悪感よりも遥かに上回る己の底知れぬ性欲に自嘲した。








2011/12/22