フランクフルトは、食べ物です(シン紅、シャルヤムばーじょん)


シンドバッド王の専らの楽しみは、純粋無垢な紅玉姫をやんわりとからかうこと。
真っ赤になるその頬に、照れと同時に潤む瞳に毎度毎度きゅんっとさせられる。
この感情は、紅玉姫からしか得られない貴重なもの。
とても、大切なのだ。


真夜中に二人でしっとりとお話しするのが日課。
今宵も月がきれいですね、等の会話をしつつ二人の時間を楽しんでいた。
そして、澄んだ空を見上げて、シンドバッドは格段の爽やかな笑顔の後に、通る男らしい声でこう提案した。
今回思いついたのは、フランクフルトとアレが似ているというか、似ているとされているのでこんな冗談を言ってみた。

「姫君、俺のフランクフルトを食べてみませんか?」
唐突過ぎる発言を、理解できずに、紅玉の頭の上には幾つもの???が浮かんできょとんとしていた。
「???????」
本当に、理解できていなくて首を傾げて真っ直ぐにシンドバッドを見つめている。

「…………」
『そ、そんな事を言うシンドバッド様はきらいですわぁ』

とか言って、頬を真っ赤にしてぷんぷん怒る紅玉を想像し、いちゃいちゃしようと思っていたシンドバッドは、我が発言を振り返って、急に気恥ずかしくなった。
そうだった、性的な事に疎い姫君に下ネタは通じない。
大事なことを今思い出してしまった。
滑ったどころか、事故った。
純粋な紅玉の視線を受け入れられなくて、顔を横に向けて反省した。


「?あ、分かりましたわぁ。たべたいです!」
僅かに距離のできたシンドバッドに近づいて、手の甲に遠慮がちに触れると紅玉は、無垢な目で見つめてとびっきりの笑顔を向ける。
美し過ぎる瞳で、ド直球な返答がシンドバッドの真ん中を打ち破る。
輝く表情から、意味は理解できていないという事が感じられる。と、シンドバッドの鋼の心も、あっさりと折れてしまいそうだった。

「シンドバッド様の手作りという事ですね。私、楽しみですわぁ。お料理も出来るのね、紳士ですわぁ」
「えっと、あの、ひ、姫君」
俺が言いたかったのは、あーで、こーで、こういうことなんですよなんて、口が裂けても言えない状況。
もう、後戻りはできない。
「あ、あの、宜しければ、私にも作り方を教えてくれませんか?」
シンドバッドは、どういう訳か傷ついた。
紅玉姫の笑顔と、紳士という言葉に。
己が楽しみのための冗談が、こんな形でかえってくるなんて。
純粋な姫君をからかおうとした罰なのか。
紳士なんて、言わないで、少しは罵ってください姫君。
ドMじゃないが、シンドバッドはそう思った。

甘えて寄り添う紅玉姫を、優しく抱きしめつつ、痛む胸を押さえた。



「……は、い。では、今度、一緒に作りましょう」

それ以上は何も言えなかった、冗談が盛大に滑った月の映える夜。






覇王:「っていう事が昨晩あったんだが、どう思う?」
八人将:「王サマ、ゲスい。けど、そんな王サマじゃないと認めない」
覇王:「やっぱり?姫君純粋過ぎて、うかつに手を出せないし、うかつにくだらんことも言えんな!さて、困った!」
と、言う割には、シンドバッドは笑顔だった。余裕だった。
シャル:「つーか、めんどくさいこと省いて、子づくりしましょ!くらい言えばよかったんじゃないっスか?」
八人将:「それ、別の漫画になっちゃうからね」








シャルルカンくんと、ヤムライハちゃんの場合

「……お前は、食ってくれんだろ」
一日の終わりにシャルルカンの部屋で身を清めたヤムライハは、水雫の残る翡翠の髪を拭いつつ声の主の方に顔を向けた。
「?何を?」
主語のない発言を聞き返す。
「ナニを」
にやりと笑って、愉しげに返すシャルルカンにヤムライハは眉を寄せて正す。
「だから、何よー」
「だーかーら、俺のフランクフルト」
「!ばか、そーいう下ネタきらいなんだから。あんた、王に触発されすぎなのよ」
昼間のシンドバッドの話を思い出して、頬を染める。
にじりよるシャルルカンの腕から逃れようと背を向けたヤムライハだったが、既に遅かった。大きな胸板にすっぽりと埋まって、もがく余裕さえ失ってその腕の優しさを感じるのみ。
「んじゃ、まわりくどくしねえで言った方が良かったか?」
見上げたシャルルカンの目は、慾の滾る雄そのもので、ヤムライハの下腹部が疼く。
未だその気にはなっていないのに、あっさりとその気にさせられる。

「もっと嫌。えっちしてる時じゃないのに、そういうこと言われるの嫌」
胸の谷間に伸びる腕を撫でて、その長くて骨ばった指がどこへ向かうのかを見届けながら素っ気なく言う。
「ヤッてる時以外は素直じゃねえよな」
潜む陰核を探り当てると、指で引っかいて皮を剥いて芯のあるそこをぐりぐりといじる。
「っ、ふ、な、れないのよ、性格だか、ら」
とてもとても優しい愛撫だけれども、確実に感じる場所を愛してくれるその触れ方に膣奥からじゅくと愛液が垂れる。
溢れ出る愛液に、ヤムライハは腰を引いて内股を擦り合わせた。

「そんなお前だからいいんだけどな」
愛撫だけでなくて、くれる言葉も優しくて。
思考が蕩けて、蕩けてどうしようもない。シャルルカンのが欲しい。ヤムライハの頭の中はそれだけだった。
「あんたの、食べたい」

シャルルカンの方に身体を向けたヤムライハは、揺れる乳房を押し付けて強引に唇を奪う。
女の細くてしなやかな指が、シャルルカンの頬を撫ぜて、咥内に絡み付くのはねっとりと甘い舌。
くちゅと水音を立てて、下肢よりも一足先に繋がるのは互いの唇と、舌。


「は、ぁ、フランクフルトより、おっきくてかたくて太いあんたのが欲しい」
ヤムライハは、唇を離すと残る羞恥心を捨て去って、シャルルカンの唇を濡れた指でなぞった。
交じり合った唾液が口端から滴り落ちる。それすらも、逃すまいとヤムライハは舌と指で舐めとった。

「腹いっぱいにしてやる」
向けられる女の熱を受け取ると、月の覗く部屋で深い交わりを楽しんだ。




えっちの後

「……フランクフルト見たら、暫くはあんたの思い出しそう」
「エッロいやつ、いつでも食わせてヤッからな。大好きなんだよなー。俺のアレ」
「!!大好きよ、認めるわ。これで満足、もー今日一杯したから明日しないから」
シャルルカンの胸板に抱きついて、むうっとした表情で呟いた。
「……やべー、嬉しいけど、照れた」
いつまでもいちゃつく二人でした。

2013/03/09

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