堕罪(シンドバッド×紅玉←ジュダル/ちょいR)

世界には、黒か、白しかないのだ。
紅玉からの弱弱しくもはっきりとした拒絶が気に入らないジュダルは、片眉を釣り上げて、寂しそうに眉を下げる紅玉を見下ろした。
此方へ振り向かないのならが、黒にしてやればいいだけの事。
とてつもなく、簡単な事なのだ。
ジュダルは、面白いことを思いついたと口端を歪めると紅い舌を出して己の口端をそろりと舐めた。




紅玉に、影が乗る。見上げたその表情の男は、最早、紅玉が知っている男ではなかった。
闘って打ち負かされるとか、そういった類のものとは、一味も二味も異なった恐怖が走る。此処を逃れなくてはと思った頃には、既に遅かった。

「いや、嫌よ、ジュダルちゃんやめて……」
ジュダルの吐息が染み込むと、紅玉身を震わせた。
紅い舌が、執拗に舐めて、痛いくらいに紅玉の首筋に吸い付く。シンドバッドのつけた痕は薄れて、今、紅玉の肌に染まるのはジュダルの証。
ざらつくしたが、ぴりっとした刺激を連れてくる。それは、シンドバッドのものとは違う。
痕をつける時に、頬に、肌に触れる髪質が違う。触れ合う体温、匂いが違った。

紅玉は、シンドバッドにキスマークをつけてもらう事が好きだった。
くすぐったくて、柔らかくて、残るのは紅い痕だけではなくて、温かくて優しい気持ちだった。
幸せに満たされるあの時が、とても好きだった。
紅の後にくれるのは、必ず優しい口づけ。
大きな腕で、強く抱きしめてくれるのは、いつも優しいシンドバッドだった。



低く揶揄するような声音に、現実に引き戻される。
「ババア、バカみてーにつけられてんなァ」
冷たい声に相反して、からみつくのはねっとりとした熱い舌。
腰紐を取られて、開かれた胸元には幾つものこる所有印を嘲笑って、ジュダルはそこを強めに押す。
すると、違う赤が残った。
ちりちりして、痛い。
「っ、いたい。私が、つけてといったのよ。シンドバッド様の証が欲しかったの。ねぇ、もうやめて」
指圧にビクッと肩を揺らした紅玉は、露わになった胸元を両手で隠した。
胸元まで支配されてしまっては、シンドバッドに会わせる顔が無い。ここだけはと、両腕で抱きしめた。
「ふーん。じゃあ、それも、俺が奪ってやる」
今まで見た中で、一番冷酷な表情だと思った。

薄い痕に、ジュダルの舌が乗ってその上から塗りつぶす様に痕をつける。シンドバッドの温もりを消されているようで、哀しかった。
胸板を押してもみても、男の力にはかなわない。顔を背けるだけで精一杯。

「……っ……ぁ…っ」
肌を這う舌の感触に、敏感な紅玉は、思わず声を上げる。ぷっくり浮き上がる乳首に、ジュダルは反応して舌先で舐めあげた。
「感じてんのか?」
絹の衣服の中から覗く乳房に目を向けると、ぎゅっと強く握りしめた。
冷酷さから一転、その表情は愉しげだ。

「いった…ぁ……ちがっ、シンドバッド様じゃないと……気持ちよくなれないわ」
紅玉は、唇を噛み締めて力なく首を横に振った。
全身に張り付くのは、嫌悪感。
肌に触れられたことよりも、一瞬でも感じてしまったことに対してのもの。

「お前のそういうとこ好きじゃねぇ。そうじゃねぇってことを、アイツだけじゃねーってことを、教えてやる」
浮き上がる乳首を、親指で押し潰すと、乳首の触れた自身の指先を見せつけるように舐めた。

狩られてしまうような、その強い視線から、紅玉は目を背けた。
肌を這っていただけの舌が、肌寒さに固くなった乳首に絡み付くと歯で摘まみ上げて先端を舐めまわす。

「は、ぁ……、やめっ、ふ……、ぅ……」
ざらつく舌がちろちろと上下に触れるだけで、連動するように下肢は疼いた。
愛撫の仕方も、シンドバッドとは違う。
けれど、身体はいう事を聞かずに気持ち良くて、抑えたはずの口からは甘い吐息が零れる。
乳房に指が食い込んで、形が変わっていることが分かる。強弱をつけて、揉みこまれる度に快楽が内股まで拡がった。
時折、ジュダルと視線が重なれば、どういう訳かシンドバッドに責められているような気がした。

乳首を、歯で引っ張られるとぞくぞくした快楽は抑えられずに、膣の奥から、とろりとしたものが零れることに気づいた。
快楽が汁となって現れると、じゅくりと胎内を濡らす。この感覚を、紅玉は拒絶してしまいたかった。
ジュダルに知られてはならないと、熱を消そうと内股をもぞもぞとすり寄せて腰を引く。
ちゅぱっと音を立てて乳首から唇を離せば、唾液でたっぷり濡らした乳房を片手で揉み続け、ジュダルは顔を近づけて問いかけた。

「濡れてんじゃねぇ?」
「!やぁ、言わないでぇ」
否定できない代わりに、恥ずかしさでどうしようもなく涙を流した。


「びしょびしょじゃねぇか」
内股にも点々とつく痕を睨みつける。こんな所にまで、自らの所有印を残るシンドバッドには、余程の独占欲を感じた。
うっすらとした恥毛の向こう側に見える、包皮したままの陰核を指先で圧す。
「あっ、じゅだ、……っ!やぁあ」
焦れったい愛撫に、籠った甘い声が響く。それに気をよくしたジュダルは、クリトリスの皮を剥いて親指で上下に撫でた。
紅玉の下肢にじんじんとした快楽が襲って、内側からとろりと愛液が零れてくる。
シンドバッドではなく、ジュダルが快楽を与えてるのだと身体に覚えこませるように、指の付け根半分ほどを挿入すれば内壁をじっくりと撫でた。
細かく動く肉壁に、ジュダルの下肢も疼く。先に、紅玉。
と、狭い割れ目に舌を這わせて、浅い部分をくちゅくちゅと舐めて、舌を這わせると愛液を吸い取る。
クリトリスの皮を剥けば、赤く熟した其処を親指で押して、時折強く舐めあげた。

「触ってるのは、大好きなシンドバッド様じゃねーぞ。シンドバッドに触られてる時よりも、ぐしょぐしょにしてんじゃねぇ?」
ジュダルの指が、舌が、胎内に埋まっては消えて、甘い痺れを感じてぼんやりとしていた紅玉だが、聞こえてきた愛しい男性の名前に、意識戻してはっとなればまた一滴の涙を流す。
好きな人意外は受け入れたくないのに、そう思えば思うほどに快感は強くなって、肉壁を濡らす。
感じてしまっては駄目だと言い聞かせるたびに、内側から溢れてくるものを抑えきれなかった。
「ちがっ、ふぁ……、ああっ、うぁ……あンっ、じゅだる、ちゃ……」
胎内に指先が入ってばらばらに動く指先に、腰を震わせてジュダルの頭を力なく押す。
「アイツだけじゃなくて、俺の指でも気持ちよくなってんだろ?」
シンドバッドは、愛でる様に撫でてくれるのに、ジュダルは、自らを刻み込むような激しい触れ方。

荒い愛撫にも、感じてしまって、肉壁を小刻みに震わせて、愛液を滴り流した。口元を抑えても、溢れる声を止めることは出来なかった。

ぐちゅぐちゅと音が響けば、胎内ごと掻き混ぜられているような感覚に陥る。
「あっ、ふぅ……あ……」
ジュダルの指の腹の感触が、下肢にダイレクトに伝わってくる。
熱が、爆発してしまいそう。
絶頂はもうすぐそこまで来ているのに、後一歩を許してくれない。
達してしまいたいもどかしさと、シンドバッドへの罪悪感に紅玉は戸惑う。

「おねが、もう、やぁ……っ!はぁ……ッ、ああっ、はぁ、シンドバッド様ぁ」
乳首も痛いくらいに立ち上がって、剥かれたままの陰核の皮も落ちて、そこからじんじん熱が広がる。
快感を押し殺す様に紅玉は己の指を噛んで、遠くを見つめつつ、愛しい人の名を呼んだ。

直接、紅玉に触れているのは己だというのに、まるでこちらをみない紅玉に苛立ったジュダルは、添えていた指を増やしてぐちゅぐちゅと抜き差しを繰り返す。
絶頂を懇願する紅玉を見たかったのだが、他の男の愛撫でであっさりと達してしまう女なのだと教えてやりたかった。

「やめてやんねー。お前のイク顔しっかり見てやる。分かってんのか?お前の目の前にいるのは、俺だ。シンドバッドはいねーんだよ」
「いやぁ、シンドバッドさ、あっ、やっ、あああっ!」
奥の狭い内壁を強く擦られ、陰核に刺激を与えられると、腹の底が疼いて、熱が、完全に全身に廻る。
限界だった。
普段よりも、声を短く発して力なくベッドへと背を預けて、広がる熱に唇を震わせていた。
膣肉の細かい痙攣に、ジュダルも紅玉が絶頂を迎えたことを知った。

「すげーな、紅玉。派手にイッたじゃねーか」
力の入らない手と、ジュダルから吐き捨てられる言葉によって、紅玉は、漸く己が達してしまったのだという事を知った。


紅玉の内股は、愛液でびっしょりと濡れていた。手に纏わりつく体液を、ジュダルは丁寧に、しかし、品無く音を立てて舐めとった。
「……、ふ……っ、ッく……」
気が触れそうになって、涙が止まらなかった。

「好きでもねー男の指と、舌でイかされちまって、だッらしねー女。シンドバッドが知ったらどうすんだろうな。すげー楽しみ」
何もかにもが、シンドバッドとは違った。
ジュダルのすべてを拒絶できなかったのは、報われない絶望を知った、以前の自分と似ていたからだった。
指先に力の入る頃には、状況が把握できて、一時的に熱くなった身体と、ぐっしょり濡れた内股が一気に冷えた。
絶頂の後にも残るじゅわりとした快楽に、シンドバッド以外の男に感じてしまったのだと改めて理解する。
今までの想いを否定された気がした。

声は出ない代わりに、涙だけが溢れる。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を、紅玉は腕で隠した。近づいてくるジュダルの事にまで、気が廻らなかった。


眼前を隠しても、影が出来ていることは分かった。
「お前ら二人とも、壊れちまえ。……壊してやる」
吐き捨てる声が、紅玉には、寂しくて、苦しく感じた。
不思議と、怒りは無かった。
本能的に身を震わせていた紅玉だが、落された、重ねるだけの優しいキスに、ある種の憐れみを感じた。
同情とは、違う哀しいもの。

そして、何とも言い難いこの想いも、ジュダルの頬に伸ばしてしまった手によって、罪の匂いがした。

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2012/10/19
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