お姫様は、世間知らず(シンドバッド×紅玉) | ナノ


お姫様は、世間知らず(シンドバッド×紅玉)




シンドバッドは頭を抱えていた。

目の前で首を傾げる姫君は、男女の営みをまるで知らない、無垢な生娘なのだ。
煌帝国で、蝶よ、花よ、と大事に育てられたのだろうか。

「シンドバッド様ぁ、ふぇらってどういう意味なのですか?」
頬を朱色に染めて、笑顔で近づいてくる紅玉に、シンドバッドも同じような笑みを浮かべて会釈した。
そして、次いだ言葉には顔を引き攣らせて目を見開いた。
卑猥な言葉を放ちつつも、その瞳には一切の穢れも映し出されてはいない。
驚くほどに、純真そのものだった。

誰かの入れ知恵だろうか。大きなため息をついて、シンドバッドは己の額に手を当てて問いかけた。
「姫君、なぜそのような言葉を?」
「ジュダルちゃんが……、シンドバッド様にふぇらくらいしたのかと聞いてきたもので」
「余計な事を」
出てきた名に、また頭を抱える。
「どういう行為なのですか?誰も教えてくれないの」
可愛らしい紅玉に、袖を引っ張られておねだりされても、シンドバッドは口を閉ざしたままだった。
「……説明はし難いな」
と、それだけ零した。

「シンドバッド様なら、知っているんでしょう?ジュダルちゃんが、それをすればシンドバッド様がよろこぶって言ってたの」
仔猫も様な瞳でせがまれても、口淫の意を説明は出来ない。
話は脱線するのだが、齢17でフェラも知らないとは、色々と教え込みたい気持ちがふつふつと沸いてくる。
無垢な少女を自分色に染めてしまうのも、それもまた一興。
本気で悩む紅玉をよそに、シンドバッドは頭の片隅でそんな事を考えていた。

「シンドバッド様も教えてはくれないのですね。何か大事な儀式なのかしら」
嫌気がさすくらいに、真っ直ぐに自分を想ってくれている。
ああだ、こうだと考えてはいたが、理性が、ぷつりと切れた。

しゅんと寂しそうにする紅玉を見て、シンドバッドは腕を組みかえて笑顔で頷いた。

こうなれば、やけくそ。
シンドバッドの唇は、自然と動いた。
「姫君がそこまで言うのなら、教えて差し上げましょう」
「わあ、流石、シンドバッド様ですわぁ」
柔らかな笑顔が、シンドバッドには心苦しく感じた。が、白を、自分色に染め上げたいという気持ちにもまた逆らえなかった。

悪いのは、世間知らずの姫君か。それとも、良からぬことを吹き込んだ煌帝国の神官か。

或いは、実戦で教え込もうとしている七海の覇王なのか。

答えは分かり切っていた。


世間知らずの、愛らしい姫君に、どこから教え込もうか。



2012/07/27

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