ロマンス希望(ジャック×セブン)

「何の用だ?」
放課後は、テラスにしゅう〜ご〜と気の抜けた声でジャックに言われ、何事かと渋々ジャックの元に訪れたセブンは、夕日を眺める金髪に声をかけた。
「あっ、セブン〜、特に何もないよ」
振り向いたジャックの口端は緩んでいるのだが、目元は当然のように笑っていない。
分かったと心の中で呟いたセブンは腕を組み直して、一歩後退そして背を向けてテラスから出て行こうとしていた。

「冷たいねー。僕とおしゃべりするのはそんなにイヤ?」
早すぎるセブンの撤退に、瞬きした後に、いつものように明るい声音で問いかける。その声に、セブンの動きも止まった。
「嫌だとか、そういう訳では無い。ここじゃないといけないのか?」
努めて子供をあやす様な優しい言い方を心掛けた。
「ここが良いんだよね〜」
「こんなカップルだらけの場所じゃなくてもいいだろう。0組でも話は出来る」

セブンは、放課後のテラスが苦手だった。
恋人同士の戯れの場とも言われるこの場所が。恋人同士が、仲睦まじく話していることが嫌だという訳では無い。
甘い雰囲気を醸し出すこの場所に、自分が存在しているという事が気恥ずかしいのだ。
色めくこの場所に、自分は似合わないから、出来ることならば今すぐにでも逃げ出してしまいたかった。

「0組も良いけど、ここのがセブンと恋人気分を味わえるでしょ」
相変わらずふわふわした声音なのだが、目は真剣そのもの。そのギャップに、セブンは不覚にもときめいてしまう。
「いちいち恥ずかしいことを……、私じゃなくてもいいんだろ」
誰にでも愛想のいいジャックの言葉に振り回されてはいけないと、凛と立つセブンは一瞥して冷たく呟く。
「分かってないな〜。セブンとロマンス希望なんですけど、どうですか?」
「……」
「……どうですか?」
続く無言に耐えられなくて、ジャックは笑顔で再度問いかけた。
「……保留にしておいてくれ」
突き放されると覚悟を決めていたジャックは、目を見開いて驚いた。

「良い返事、期待しておくね」
ジャックは、セブンのはにかんだ一瞬の笑みを見逃さなかった。



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2012/06/16

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