紅と、橙と。(恋織一/学生パロ) | ナノ




紅と、橙と。(恋織一/学生パロ)
「「おっ…。」」
夕陽の差し込む自身の教室の扉を開けた一護は、恋次と目があった。二人は同時に声を上げる。
互いの視線がぶつかったかと思えば、同時に逸らした。

「何してんだよ。」
外れた視線が向き合って、眉根を寄せて互いを睨み合っている。先に言葉を発したのは恋次だった。
一護が自分と同じ気持ちならならば、わざわざ放課後にこの場所へやってくる目的は一つ。
分かり切った答えをストレートに問いかけるのではなくて、先ずは威嚇めいた声を上げた。

「べっつに。オマエこそ何してんだよ。早く帰れって。」
己の気持ちを親友にも吐露するものかと、知らぬ振りして鞄を机の上に置くと秒針刻む時計を一瞥した。
もうそろそろ、彼女が訪れる時間。
二人の待ち人は、おっとりした彼女なのだ。

「恋次こそ、早く帰れ。俺は、用事があるんだよ。」
二人きりになど、させてやるものかと一護の語気は荒い。
「ああ?俺だって用事があんだよ。テメーが帰れ。」
恋次とて同じ気持ちだった。負けてなるものかと、一触即発。発火寸前!


「あれ?二人ともまだ帰ってなかったの?早く帰らないと危ないよ。」
熱い火花は優しい声音に打ち消された。照れくさそうにする二人の視線は一点集中。

「「せんせーこそ、あぶねえだろ。暇だから、送ってやる。」」


「あはは、ありがとう。二人とも同じこと言った。気が合うねぇ。」

恋する相手も同じ、セリフも同じ。きっと考えていることも同じ。
恋次と一護は面白くなさそうにヒクリと口端を釣り上げた。



井上先生の隣は、俺が勝ち取ってやる。

頭一個分以上小さな織姫に視線を向けて、紅と橙は強い決意をした。









2012/04/07