制服ごっこ | ナノ




制服ごっこ
(ノットパロ)


「朽木たーいちょ。現世の制服って言うらしいんですけどどーですか?」
どうですかも何も、白哉の目の前にドンっと在るのは相変わらず零れ落ちそうな乱菊の自慢の胸。
ブラウスから覗く胸元からそっと視線逸らして関心の無い振りをした。

似合っていて、死覇装とは違う雰囲気を漂わせている。
白哉も制服乱菊は嫌いではなく、寧ろ好みの部類でもあった。

「女子がそのような薄着でどうする。はしたない。」
巧い言葉など出てこなくて、理性のままに。
変わらず眉間に皺を寄せたまま、小難しいことが書かれた書類に目を通した。
「朽木隊長のお好みではないですか。ざーんねん。」
短いスカートの端を引っ張って頬を膨らませる。
はあっと深いため息をつくと、一緒に書類を覗き込む。しかし、びっしりと文字の並んだそこに頭が痛くなりそうになって視線を逸らした。

「朽木隊長があたしの教師だったら、厳しそうですよねー。」
ふと思い浮かんだ、現世で見た『教師』というものを白哉に重ねる。なかなか似合っていると、思う反面、仮に白哉が教師で自分が生徒だったらと考えれば常に叱咤されている自分が浮かんでクスリと笑った。
「……兄には特に厳しくいく。乱れた生活態度から躾けてやる。」
毎回毎回、さぼって仕方がないとぼやく冬獅郎を思い出して声音低めに辛辣に呟く。
やる気満々だ。
「あはは、それは、困りましたねー。毎回お呼び出しなんですか?」
「毎回ではなく、毎時間呼び出してやろう。」
「朽木……先生に呼び出されるなら嬉しいかも!」
「何を。躾ける度にそのように笑っていられては困る。」
「あたし、手のかかる生徒だと思いますよー。」
「今でも、十分手がかかっておる。」
聞き流しながら、筆を執ってさらさらと名を記す。
「そんなあたしでも、好きなんですよねー。」
普段ならば完璧に枠内に収まるはずなのだが、僅かにはみ出してしまった。
「また、くだらぬことをつらつらと。」
「くだらなくないでしょ?違うんですか?」
「答える必要などない。」
否定する気はないが、到底肯定などもできない。曖昧に返事をした。
「えー、夜とかすっごいじゃないですか。たいちょー、意外とおっぱい好きですし。この前なんか……。」
窺える白哉の動揺に、楽しくなってきて悪ふざけを続ける。
「……黙らぬか、乱菊。」
己の隠れた性癖を暴露されて、黙っていられるほど冷静ではない。
大きな声で揶揄する乱菊に鋭い視線を向けた。しかし、名を呼ばれたことに、少しだけ感動して怯えるわけでもなくにっこりとした笑みを浮かべた。
「はーい。今夜は制服プレイで、厳しく躾けられちゃうんでしょうねー。楽しみィ。」
口端を釣り上げて、乱菊は指先で白哉の頬をなぞった。

「これ以上、下らぬことを言えぬようにしてやろう。」
細い指先が這う感触にぴくりと眉を動かす。

無駄口叩けぬように、獣の様に抱いてやろう。

つまらない書類を流し読みして、六番隊の印を押した。

執務終了まであと少し。浮足立っているのは乱菊だけではなかった。





2011/10/26