いちゃいちゃ | ナノ




いちゃいちゃ
放課後の渡り廊下で、部活に励む生徒たちを窓から二人で傍観していた。
例え数分でも、二人きりの時間が楽しみだった。

「織姫、手ェ出せ。」
現世に遊びに来ている恋次は、現世で修行という名目で浦原商店に身を置いていた。
高校の制服に身を纏う姿は、身が引き締まる死覇装とは異なっていて死神ではなくて現世に本当にいる人物のように見えて織姫は嬉しかった。
見慣れた刺青を指でなぞっていると、不意に聞こえた言葉に首を傾げた。恋次はくすぐったそうに顔を振る。
「うん、どーぞ。」
ナニしでかしてくれるのかと思いつつも、素直に恋次よりも一回り以上も小さな右手を拳作って差し出した。
織姫の右手の指を一本一本開いて、恋次の左の手指が絡み付いてくる。ぎゅうっと強く握りしめられた。

恋次のスキンシップが始まった。
「恋次くん、ここ学校だよ。」
「いいって誰も見てねえし。手ェ繋がせろ。」
こうなってしまえば恋次は、手を離すなんてことはしてくれない。観念した織姫はぴんっと立てていた指を恋次の指に絡めることにした。
「……、誰かに見られたらどう言い訳するの?」
辺りを見渡して、誰もいないことを確認すると手を繋いだままそっと恋次の腕に寄り添った。
「言い訳しねえよ。付き合ってんだ、文句あっかーって言う。そんだけ。」
沈む夕日を眺めていた恋次だが、視線を織姫に向けると真っ直ぐな言葉をぶつけた。どんな面白い言い訳が聞けるのかと楽しみにしていた織姫は男らしい言葉に面食らった。
不意打ちでこういう事を言われるから困る。こういう真っ直ぐなところが好きなのかもしれないとも思う。

「恋次くんにそういわれたら、誰も何も言えないね。」
こみ上げる嬉しい思いを知られまいと俯いて小さく呟いた。
「だから、堂々としてりゃあいいんだよ。」
ぶっきらぼうに続けて、額の皺を濃くして見せた。握られた指先の先から熱くて、力強い思いが伝わる。

「うん、でーも、この先は、お家帰ってからだからねー。」
ちょっと良い雰囲気の中で、隙の有る織姫の腰に手を回して口づけをしようとしたがあえなく撃沈。
いちゃいちゃの続きは、二人きりで。
二人だけのモノ。









2011/12/08