「んで、どうするんだ。」

そう言って出されたのは進路希望調査の紙だった。一昨日私が提出したもの。杉江先生は何も言わない私に溜息を吐いた。呆れているんだと思う。私が今一番なりたいのは『お嫁さん』で誰のお嫁さんになりたいのかと言うと、杉江先生のお嫁さんにだった。

「どうするも何も、私の夢はお嫁さんですから」
「進学するのか、就職するのか」
「お嫁さんは就職に入りますか?」
「親御さんと話はしたのか?お前の学力ならM大くらいは行けるぞ」
「‥そうやって話をはぐらかすんですね」

杉江先生はムスっとした私を見つめた。無表情だった。何を考えているのか分からなくて悔しかった。

「お前は、俺の嫁になりたいとでも言うんだろう」
「そうですよ」
「でも俺はその気持ちには応えられない。知っているだろう。俺は教師でお前は生徒」
「そんな事くらい分かってますよ。ガキじゃあるまいし」
「ガキだろ」

杉江先生は呆れたように溜息を吐いた。しまったな、ああやって応えるべきじゃ無かった。杉江先生の眼中に私なんて入って無いの?悔しい。私はずっと先生のことが好きだったのに。

「それでも好きなんです。どうしたらいいんですか」
「‥俺に聞くな」
「先生なんでしょう?私の進路相談乗ってくれないんですか?」
「だから、お前にはM大に行ける能力があるって言っているだろ」
「私は進学したいんじゃない」

思わず声を荒げてしまう。感傷的になりすぎたのか涙がこぼれてきた。それにギョッとする杉江先生。理由はともあれ生徒である私を泣かせてしまった事に少なからず罪悪感を感じているんだと思う。涙は止めたくても止められなかった。

「進学したいんじゃないのに」
「でも俺にはどうにもできない」
「‥‥前、どうしてキスしてくれたんですか。何で期待させるようなことするんですか。私杉江先生のお嫁さんになれるかもって勘違いしたんですよ?先生が今困ってるのは先生のせいでしょう?私も困っているんですよ?先生のせいでしょう?」
「‥‥そうだな」
「もうヤだ。先生と話したくない」

席を立って進路指導室から出て行けば、私の名前を呼ぶ先生の声なんて聞こえなかった。明日からどうやって会えばいいの。私の夢はどうなるの。先生は何で私にキスしたの。私のこと好きなんじゃないくせに。


進路希望調査
先生と2人きりなのに、少しも幸せじゃ無かった。変なの。







「in one’s youth」様に提出しました。参加させていただきありがとうございました!


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