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1.集合時間は厳守です


attention!

・誠凛、秀徳、桐皇、海常、陽泉、洛山の六校合同合宿話。
・赤司さんはナチュラルに女体化
・IH後のイメージなので、キセキは全員和解したわけじゃないはずなのに仲良し
・というか時系列いろいろ無視している
・キセキが気持ち悪いくらい仲良し

以上のことが許せる方はそのままお進みくださいませ







1.集合時間は厳守です

某県某所。海の見える海岸近くの合宿施設に、一台のバスが到着した。駐車場にはすでに同じようなバスが四台。あれ、うちが最後じゃなかったのかと氷室が首を傾げるのと、隣に座っていた紫原が跳ねるようにバスを飛び出していったのは、ほとんど同時であった。

「あ、こら敦!」

慌てて氷室が呼び止めるも、2mを超える巨体は振り向きもしない。それどころかのっしのっしとバスの階段を遠慮なしに降りるものだから、バス自体がぐらぐら揺れた。普段ののんびり、というかゆるゆるした姿からは考えられないようなその機敏さに、一体どうしたんだと氷室はバスの窓から彼の行動を眺め、数秒後、すぐに納得のいった表情をする。バスを降りた紫原がまっすぐに駆けていったのは、合宿施設の入り口に集まっている、やたらカラフルな集団。赤色、緑色、黄色、水色。何か足りないような気がするが、とりあえずその髪色だけで、遠くからでも判断できる。あれはキセキの世代だ。紫原敦の元チームメイトたち。

紫原はそのやたら目立つ集団に向かって長い腕をぶんぶん振りながら、減速しないままに突っ込んでいった。

「…え?!」

氷室はその光景にぎょっとして一瞬硬直し、すぐに我に返ると慌ててバスを降りる。氷室の見間違いでなければ、紫原はあの集団のなかで最も小さい赤い髪を持つ少女―赤司に向かって、減速しないままに突進したのだ。元々紫原は大柄で、平均身長の男子ですら突進されれば跳ね飛ばされてしまいそうなくらいなのに、さらに小さな女の子に向かってあの馬鹿は一体何をしでかしてくれたのか。どうしよううっかり傷害事件とかに発展してしまったら、などと恐ろしいことを考えつつ駆け足でバスを降りた氷室が見たのは、跳ね飛ばされて地面に横たわる少女でも、キセキ達の慌てる姿でもなく…

「あ、あつし…?」

赤司を抱き上げて楽しそうにぐるぐる回りながらはしゃぐ紫原の姿であった。脱力。思わずその場にがくりと膝をついた氷室に対し、後から降りてきた主将、岡村が慰めるように肩を叩いたのは言うまでもなく。

ああ、これが取り越し苦労というものか、俺はまた一つ日本語に強くなったよと氷室は遠い目をしながら思ったのだった。


* * * * *

「赤ちーん!!!!」

ぶんぶんと腕を振りながら満面の笑みでこちらへ向かってくる様子はさながら犬のようだと赤司は思う。いや、実際あまり間違っていないのかもしれない。中学時代、紫原が赤司を後ろから抱き込むようにくっついている姿は生徒たちにとって当たり前の光景となっていて、それ故「紫原は赤司の番犬」とまで言われていたのだから。赤司自身は、守られているというよりも懐かれている、といった認識のが強かったのだが。

「わ、敦?!」

紫原は赤司の傍まで走ってくると、突進するように赤司に抱きついた。赤司は平均身長を下回る程度の身長しかないため、当然紫原を支えきれずに身体が傾ぐ。そのバランスの崩れた膝を掬い上げるようにして赤司を抱き上げた紫原は、吃驚して目を白黒させている赤司を気にする様子もなく、赤ちん赤ちんと赤司を呼びながら喜びを隠しきれない様子でくるくると回った。手入れされた長い紅髪がふわりと空に広がる。コントラストが美しくも眩しい。

「紫原!!危ないのだよ!!!」
「赤司さんがびっくりして固まってます。降ろしてあげてください」
「そうッスよ!このままじゃ赤司っち、目が回ってダウンしちゃう!」
「ちぇー…」

子どものように口をとがらせて拗ねたポーズをとって見せた紫原は、それでも赤司が体調を悪くしては大変としぶしぶその身体を地面に降ろした。

「赤ちんごめんねー?気持ち悪くない?」
「平気だ。でも心臓に悪いから次からは気を付けてくれ」
「うん!」

ええ、それだけ?!おとがめなし?!と思ったのは赤司と紫原を除くその場にいたキセキの世代全員である。赤司は昔から紫原には甘かったが、さすがに今回のことはもう少し怒ってもいいのではないか。下手をすれば怪我をしていたかもしれないのに。

「…黒子、気持ちはわかるが、赤司がいいと決めたことだ。もう掘り返したら駄目なのだよ」
「…僕、そんなに顔に出てました?」
「そりゃあもうはっきりと。不満です、って顔にかいてあったッスよー」
「…以後気を付けます」

ポーカーフェイスは得意のはずなのに、と小さく呟いた黒子は、俺たちの前ではそんなの無効ッスよ、という黄瀬の言葉に仏頂面を崩した。

「そうですね、君たちの前では僕も上手く隠し事ができないみたいです」
「そんなの当たり前だろう、なにを言っているんだテツヤは」

そもそもの原因である赤司にまでそう言われてしまったので、黒子は全くかなわないなあとくすくすと笑みを零したのだった。

「ところでお前たち、さつきと大輝はどうしたんだ?」
「さあ、まだのようですけど…」
「なぜ秋田から来ている紫原より東京から来るはずの桐皇のほうが遅いのか、理解に苦しむのだよ」
「どうせ青峰っちが寝坊したんじゃないッスかー?あのひと大事なときにはいーっつも寝坊ばっかするッスよ」
「でも峰ちんにはさっちんいるし大丈夫でしょー」
「…大丈夫じゃなかったから遅刻しているんだろう。…まあいいけど。大輝には後でお仕置きしないとね」

にこり、と怖いくらい綺麗な笑みを浮かべた赤司に、キセキ達は心の中で合掌をする。

「青峰くん、君のことは忘れません」

到着する前に祈られているとも知らず、青峰たちを乗せたバスが駐車場に入ってきたのは、それから約十分後のことだった。







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