mobile text | ナノ




私と彼、裏表


◎比呂視点

「雅治くん、かっこいいよね。比呂ちゃんが羨ましいなあ」

これは、幼い頃からずっと言われ続けてきた言葉だった。双子の弟にあたる雅治は、それはもう綺麗な顔をしている。きりりと釣り上がった切れ長の眼に、すっと通った鼻筋。口元の黒子が色っぽいと言っていたのはいったい誰だったか、言われ慣れてしまってもう思い出せないほどだ。男の人にとっては長所であるそんな顔立ちも、似た顔を持つ私にとってはコンプレックスでしかなかった。女性にしてはきつめの顔立ちで、背も高い。髪が短ければきっと男と間違えられるに違いない。だからこそ伸ばした髪はもうすぐ腰の辺りに届く。釣り上がった瞳は目立たないように眼鏡で隠している。

いつだったか、雅治にコンタクトにしないかと尋ねられたとき、この理由を話したら泣き出す寸前の情けない顔で俺が嫌いなのかと言われた。そんな馬鹿なことがありますか!と、その時は彼を一喝して終わったが、しばらくの間彼が不安そうにしていたのは記憶に新しい。

別に、雅治の顔が嫌いなわけではない。(むしろあの顔立ちが嫌いなひとがいたら見てみたい)ただ、自分の顔が好きではないというだけのはなし。


「雅治くん、かっこいいよね。比呂ちゃんが羨ましいなあ」


確かに雅治はかっこいいかもしれない。だけど、それは顔だけの話。中身はとても甘えたで、弟達や両親の前では大人ぶっているくせに私にはベタベタと懐いてくる。寂しがり屋で気紛れで、どうしようもなくへたれている。そんな雅治をみたら、彼をかっこいいと言う友人達はどんな反応をするのだろうか。それでもかっこいいと言い張るのなら、いっそ尊敬に値する。


「比呂ー、ひろ、比呂ちゃーん、一緒にマリカせん?」
「…私は今勉強中なのですが。ブン太を誘ったらどうですか?あの子はゲームが好きでしょう」
「や、じゃ。俺は比呂とやりたい。今すぐ」
「….…仕方ないですね。一回だけですよ」


ああ、私も甘いあまい。


「雅治くん、かっこいいよね。比呂ちゃんが羨ましいなあ」


ええ、そうでしょう。見た目はかっこいい、中身はてんで子どもな彼が、私はとても愛しく思えるのです。羨んだってあげませんよ、だって私は、

私は、雅治のお姉さんですから。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -