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届かない想い


「あのね、大きくなったらね!」


「…あ゛ー…夢、か…。」


また懐かしいモンを見たな。
ま、忘れたコトねぇけど。


「(けどアレだよな。)」


言った本人はぜってー忘れてる。


「あー、ダリぃ。」


イライラしてきた。
寝ちまうか
どうせ練習したって意味ねぇし。


「また屋上でサボってる!
青峰くんッ練習始まってるよ!」


――来た。
あんな夢を見た後だから会いたくねぇ。


「っせぇな。
練習する必要ねぇだろ。
俺に勝てんのは俺だけだからな。」
「またそんなこと言って…。
きーちゃんやテツくんとも試合するんだよ?」
「だから何だよ?
さつきテメェ、まさか俺が負けるとでも思ってんのか?」
「違ッ」
「じゃあ帰れよ。
練習はしねぇ。試合には出る。
いつものコトだろ。」
「でも、原澤監督だって

“たまには練習に参加してみてはいかがでしょう?

って言ってるし…。」


ホラな。
いつからか忘れたけどよ、さつきが俺を呼びに来る時、“原澤監督”って言いやがる。
ンだよ。
あんなヤツのどこがいいんだよ。


「あのね、」


「…ッ」
「青峰くん?」


ヤ メ ロ


「大きくなったらね!」


「ッ!」
「大丈夫?」


「さつき、大ちゃんのお嫁さんになるの!」



ドンッ


「痛っ!
青峰くん何するの!?」
「……ょ」
「え?」
「忘れたのかよ。」

「な、なんの話?
ていうか離してよッ」
「…“大きくなったら、さつき、大ちゃんのお嫁さんになるの”」
「はぁ!?何それ!」
「ガキの頃テメェが言ったんだろ。」
「そんなの覚えて「忘れたとは言わせねぇ。」


無理矢理押さえつけた身体が震えてる。
俺を見る目が怯えてる。

違う。
こんなコトしてぇんじゃねぇ。

けど止めらんねぇ。


「カハッ
自分で言ったくせに忘れてるとか世話ねぇな。

――そんなに監督が好きなのかよ。」
「…な、何言って…」
「さつきはアイツが好きなんだろ?」
「ッ!?」


ンだよ、その反応。
やっぱり好きなんじゃねぇか。
くそッ…


「(ムカつく)」
「青峰くん放して!
痛いってば!」
「――なぁ。」
「な、に?」
「俺にしとけよ。」


わかってる。
これが子供じみた嫉妬だってコトくれぇ、俺にだってわかってる。
けどな、そんな簡単に抑えられねぇんだよ。

ガキの頃からずっと一緒だった。
何の根拠もねぇけど、これからもずっと一緒だって思ってた。
馬鹿みてぇにガキの頃の約束を覚えてて。
それがいつか実現するって、勝手に信じてた。

だから、そばから離れていくのがすげぇ怖い。


「…俺から…離れんな…。
頼む…。」
「…青峰、くん…」





届かない想い
(そばにいてほしい)
(ただそれだけなのに、)








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