【ferocious主人公】
朝一に慌ただしく調査兵団へ出勤していった彼女を見送ったリヴァイは、用意してもらった朝食を食べ終えるとレイを叩き起した。トーストを齧りながらカレンダーを見れば12月25日。
「今日クリスマスじゃん!」
全てはこの一言から始まった。
リビングのテーブルに乱雑に置かれたハサミやノリ、テープ、マジック、色画用紙、折り紙etc..
床に座り込み黙々と折り紙で輪っかを作っては繋げて壁に貼っていくリヴァイと、色画用紙を切り取り文字や形を作っていくレイ。
クリスマスだから部屋を飾ろう!
あとアリソンに夜ご飯作ろう!
また何か下らない悪戯かと思いきやマトモな提案をしたのでリヴァイは珍しく協力姿勢だった。いつも多忙な彼女、帰ってくるのはいつも夜なので時間は十分にある。早速あらゆる道具を取り出して作業に取り掛かっていた。
「もうちょっと上かなぁ」
「上、上…どうだ?」
「おっけ!できたできたー!やったね!」
「あぁ」
作業開始から数時間後、リビングのデコレーションが終わった2人はパチンとハイタッチ。クリスマスらしい仕上がりだ。
「じゃあ次はご飯…あ!俺カレーなら作れるよ」
「カレーか。確かここに…あった」
「おぉ!」
ストッカーを探すと、ルー発見!
箱の裏には全部載ってるから安心だ。
肉、じゃがいも、にんじん、たまねぎ…リヴァイが読み上げヒョイヒョイと冷蔵庫から材料を取り出していく。その間レイは包丁やまな板、鍋の準備をしていた。
「手ぇ洗ったし、さてと!頑張ろう!」
「まずは…材料を切る」
音読しながら1つ1つの行程を2人でこなしていく。包丁で切って、ピーラーで皮むいてまた切って。
あはは!そのにんじん分厚過ぎない?お前のは逆に紙っぺらじゃねぇか。
「料理って大変なんだね」
「アリソンは毎日作れてすげぇな」
「しかも美味しいし」
普段は手伝うくらいしかしないので改めて1からやってみると彼女の手際の良さが分かる。俺たちだと…やっとこさ煮込むとこまで来るのに何分かかったんだろう?それなのに彼女はまるで魔法をかけたみたいに気付いたら出来上がってるのだ。
「あとはー?」
「ルー入れるだけだ」
「じゃあちょっと休憩〜」
レイはジュースを注いだコップを置き一旦部屋に行ったがすぐに戻ってきた。その手にはレターセットとペン。
「プレゼントの代わりに手紙書こ!」
「手紙…なるほど」
今日はなんだ、やけに良いことばかり言うというかするというか…便箋とペンを受け取って2人はチクタクと時計の音を聞きつつ思い思いに言葉で書き表していくのだった。
*
「ただいま!ごめんね遅くなっちゃって、」
パーンッ⌒☆
「!」
「お帰りアリソン」
「メリークリスマス!」
夜8時を過ぎ、職務を終え大急ぎでケーキとプレゼントを買い帰宅した彼女を迎えたのはクラッカー2発だった。飛び出たテープが髪にかかる。鮮やかに飾られたリビング。
「え、これ…」
「クリスマス仕様!」
「すごい…!ふふっ、これメリークリスマ『ヌ』になってる」
「うそ!?」
「それやったのレイだ、俺じゃねぇ」
「じゃあ2人にプレゼント!」
それぞれに手渡す。
それぞれが箱を開けてそれぞれが満足。
しかし欲しい物は?って聞かれてないのに何故分かるんだろう。親とは不思議だ。
「じゃあ次は俺たちから!」
「え?」
「カレーと、手紙」
「プレゼントだよ!」
「プレゼント…」
テーブルには既に用意されている食器。
そして手紙。あたたかい。
ポロポロ涙を零しながらアリソンは2人を抱き締めた。
ねぇ、こんな嬉しいことある?
「やだもう、どうしよ…!涙止まんないじゃん…っ」
「えへへへ」
「泣き虫」
「っもー…何とでも言って…!」
それでもリヴァイとレイもギュッと腕に力を込め抱きつく。2人の母親なのだ、男の子であってもたまにはこんな風に甘えたくもなる。
「ティッシュ」
「う゛ん…っ」
「早く食カレーべてケーキケーキ!」
「イチゴは絶対やらねぇからな」
「やーだ!絶対もらう」
「リヴァイ、レイ」
本当にありがとう。愛しい我が子を確かめる様にアリソンはもう1度2人を強く抱き締めた。
「メリークリスマス!大好き!」
メリークリスマス!
最高のクリスマスプレゼントは一番お金をかけたものではなく、一番多くの愛がこもっているもの。
ヘンリー・ヴァン・ダイク