「…ふぁ…」

寝惚けまなこ全開でレイはバキボキと身体中の骨を鳴らす。引越し祝いにと2人から初日の帰りがけに渡されたキャラクターの目覚まし時計。知らないキャラなんですけど、リサイクルショップで見つけたから。あなた方の祝う気持ちは中古ですかオイ。

リビングからいいにおい。とりあえず朝飯は…作らなきゃいけないのか…めんどくさい…。そういや自分で起きるなんて何年ぶりだろ。いつもばーちゃんに起こしてもらってたからなぁ。ばーちゃんの卵焼き食べたいよ…会いたいよ…一緒に和菓子食べたいよ…レイは本当に何も出来なかった。

「あ!レイおっはよー!」
「おはよう」
「…おはようございます」
「朝飯出来てるぞ」
「エッ、いいんですか?」
「同居人だろう」

自作のレイちゃんがプリントされた食器、というよりレイちゃん一色の食卓。とりあえず座れと言われたので席に座ると運ばれて来たご飯、味噌汁、焼き鮭、ひじきの煮物、卵焼き…何コレすごく美味しそう。

「…いただき、ます、!?」
「ミケはすっげ料理美味いんだよ!ど!?」
「…う゛んめぇぇぇ…!」
「口に合うなら良かった」
「汚ぇ顔向けん「今日はレイちゃんが生放送で出る日だ!あぁ心が滾ってくる…!」

味噌汁を啜りながらテレビに釘付けな4人を見る。というか常にこの家はBGMの如く自分の曲がかかってる(就寝時以外)から音がごっちゃでよく分からん。そういや、

「スーツ、なんですね」
「この3人会社のお偉いさんだからね」
「嘘だろオイ」
「社長に副社長に幹部!」
「マジか」
「ところでレイは何してるの?」

アイドルしてますとは言えないよな。
でもテキトーに仕事でっち上げるとのちのち自分がやらかしそうだから、ええと。

「ニートなんで朝から晩までパチンコやってます」

ガタッ!!
みんなわなわな震えている。

「ヒィィィ「朝から晩までパチンコ!?朝から晩までレイちゃんではなくパチンコ!?何たる事だ…ッ!」
「調査兵団にあるまじき行為!」
「ちょ、自分ファンじゃな「レイちゃんと同姓同名という特等席に座っておきながらテメェ…!」
「優しいお姉さん「優しくないです」方もさぞ嘆いている「嘆いてないです」に違いない!」
「!うぉぉヤベェ遅れるご馳走様でした行ってきますゥゥッ!!」

違った意味で地雷を踏んでしまったがパチンk仕事に遅れるワケにはいかない。残りを全てかき込んでレイは風のように家を出る。案の定外ではエンジンふかして2人が待っていた。

「間に合ったァ…!!」
「おはよう、バレた?」
「いや全然。てかあの人達会社の重役だった」
「え?」
「社長と副社長に幹部」
「嘘だろオイ」
「レイも仕事とか聞かれた?」
「うん、ニートで朝から晩までパチンコしてますって言っといた」
「馬鹿だろオイ」


*


PM19:00

『それではスペシャルゲストの登場!大人気アイドル、レイちゃんですどうぞ!!』
『こんばんはー!』
「レイちゃん!!来た天使ィィ!」
「衣装のデザインが素晴らしい」
「髪も見ねぇスタイルだな、クソが可愛過ぎて泣けてくる」

生放送の時間に合わせてちゃっかり帰宅した3人、今はハンジも含め4人でテレビに齧り付いていた。スタジオもこれまたすごい歓声だ。

『衣装は制服がベースかな?』
『はい!デザイナーさんと一緒に作らせて頂きました!』
『いやぁ似合ってる!そうそう!化粧品のプロデュースもしたとか?』
『そうなんです!良かったら皆さん使ってくださいね!』
「アッハッハッ!!」

画面の下に化粧品の画像と説明のテロップが流れるが、ハンジは眼鏡をキラリと光らせ3人にグッジョブした。

「諸君!コレ全部予約済み」

3人もハンジにグッジョブで返す。

「今頃レイはパチンコかぁー、こんな可愛い天使見ないなんて勿体ない」
「全額すったに1票」
「右に同じ」
「私も!」
「俺も」

知らぬはなんとやら。

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