『あーあ』

無惨にも割れ砕けた窓から入ってくる生温い風がリヴァイの頬に当たる。肉片となって倒れている部下。イーターが足下の最早誰のモノともつかない腕を踏み潰すとその反動で血が外套に飛び移った。

『可哀想に』
「…」
『でもこうなったのは彼等のせい』
「…」
『殺さなきゃいけないのに殺せなかった』

それは彼等が弱かったから、選択を間違えたから。

『でしょう?』
「…」

再び首を傾げると狐はしゃがみ、剥き出しになった心臓を取り上げ面を少しだけ外すとソレを口元に運んだ。咀嚼する音が微かに聞こえる。リヴァイの位置から顔は見えない。

『でも大丈夫、即死でしたか「随分と喋りたがりのイーターがいたもんだ」
『?』
「言いたい事はそれだけか?」


「リヴァイ!」


ハンジとミケが駆け込んでくる。
そこにはホルスターに銃をしまうリヴァイと血溜まりの中で仰向けに倒れるイーターがいた。弱点である額を撃たれたのだろう場所には銃弾と同じ大きさの穴が2つ。

「…確かに死んでる」
「私も確認した」
「俺だ、捜査官4名の死亡とイーター1体の抹殺を報告する。…了解」

持ち主を亡くしたアルマを拾い上げようとしたリヴァイの手が止まる。今すぐにでもイーターと引き離してやりたいが鑑識が入る為そうもいかない。
花を手向け葬るのは随分先になるが…今までよくやってくれた。
目の前の光景を焼き付けるように見つめ3人はこの部屋を後にする。

「被害状況に変わりは?」
「死亡23、重症1のまま」
「そうか、行くぞ」


*


「……ふふっ、あはははは」

レイは仰向けに倒れたまま笑う。
跡形も無く塞がった額の傷を触るとその場から跳ね起きた。ズレた面を直すと割れた窓の方へ向かう。重症1はエレンだな。
23か…割り振るとたぶん、サシャが15でナナバが5のエルヴィンが3…だけど23人分の脳味噌ちゃっかり見てそう。その前にキャラ面つけて真剣に脳味噌査定とかシュール過ぎる。

「さて、合流しますかね」

助走をつけることなくそのまま暗闇へと落下していく。その瞬間今までいた部屋が爆発したのをレイは面越しから笑って見ていた。


*


遠くに見える繁華街のネオンに逆らう様に暗闇をスタスタと歩く。狙われている事に気付いていない彼はただ目的地へと向かって。

「バレちゃってるけど」

言ったと同時に遠くから銃でレイを狙っていた3人の捜査官が倒れる。1人は後ろから蹴られたのか背骨が粉々に折れ、もう1人は目玉と腕を引きちぎられ、もう1人は頭を掴まれそのまま壁に叩き付けられて、誰もが即死だった。

「さすが」
「何時間待たせたと思ってんだよ!」
「そんなに待った?ごめん」
「止まれ」
「あれ?まだいた」
「1歩でも動いたら殺す」

突然レイの額にすれ違い様アルマが当てられる。
私服だったから一般人かと思ってた。でもそうか、賢明な一般人ならこんな誰も通らなそうな夜道1人で歩かないか。無視してあげようと思ってたのに。まぁ味方を犠牲にしてでも仕留めようとするその意思は勇敢だね。
でも残念でした。

「額じゃないんだな」

瞬きもしない内に身体を突き破った左手が捜査官の心臓を一瞬で抉り取る。美味しそうだけど…食べる気分じゃないとポイと投げ捨て、既に息がない捜査官を一瞥すると向き直った。

「みんなお疲れ様」
「レイさんもお疲れ様です!」
「ありがとう。楽しかったね」
「聞いてくれ、私の食べた脳味「ホント黙れよ変態!」

さぁ勝利の宴をしにカフェに戻ろうと、先程までの残忍さとは打って変わって和やかに暗闇へ消えていくイーター達。

風に外套が揺られ見えたのは一丁の銃だった。

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