(魂が湧き上がるような気持ちになったことはありますか?)

「そろそろだね!」

明るく照らしていた照明が全て消え、モニターには10という数字が浮かび上がりカウントダウンが始まった。

「10!9!」

(忘れたくない瞬間に出会ったことはありますか?)

「いよ「8!7!」いよか」
「あぁ、心の準備は既に前回のライブが終わった時から出「6!5!4!」

(みんなで楽しく笑って大きな声を出して、手を叩いて燃え上がったことはありますか?)

「怪我だけはしないようにな」
「了解」
「レイ」
「ん?」
「いってらっしゃい」
「行ってきます!」

(もしなかったとしたら届けます)

「3!2!1!」

(これらの全てを、わたしがあなたへ)

「レイちゃーん!!」

大きな花火の音、四方八方から放たれるレーザーと煌びやかな照明が会場を飾り出す。
そしてステージの真ん中から飛び出すように現れ歌い始める1人の少女。
その姿がモニターにも映し出され瞬時に空気は熱を持つ。歓声、拍手、手を振る人、踊る人、歌う人、ペンライトを振る人。その誰もが生き生きとした表情でステージの少女を見つめていた。

「キャーーッ!」
「レイちゃん!レイちゃん!!」
「ウオアアアアアアレイちゃんキターッ!!」
「こっち手ぇ振ってーっ!!」

少女は歌い、笑顔で手を振りながら広いスタジアムの中を所狭しと移動していく。時折マイクをファンの方へ向ければ返ってくる大合唱。
ライブはみんなで作り上げるもの。
しばらくして1曲目が歌い終わると少女は大きく一礼して話し始めた。相変わらずライブが始まったままの歓声の大きさだ。

『はじめましての方もそうでない方もこんばんは!レイです!!』
「クソ…ッ!今日も天使すぎるじゃねぇか…!」
「泣けリヴァイ、だってレイちゃんは天使だ」
『今日は来てくれて本当にありがとうございます!!実はこれテレビ放送もされてる?とかなんとか!』

此処に来てくれたみんなに感謝を。
此処に来れなかったみんなにも感謝を。

『ですが、気にせず通常運転でいこう!!』
「いえーい!!」

1人1人の声が力をくれる。

『ではみんな!準備はいい!?』
「ウォォォォいつでもイイぜェェェ!!」
「レイちゃんかわいいー!」
『ありがとね!!じゃあ2時間ぶっ通しでいっくよー!』

少女は大きく息を吸うとビシッと人差し指を高く高く空へと上げる。すると会場が先程の盛り上がりが嘘だったかの様に静まり返った。

『レイちゃんに!?』

可愛いだけじゃない。
そんな括りだけにわたしは収まらない。
だからみんなに見せてあげる。


「「「心臓を捧げよ!!!!」」」


色とりどりの花火が上がり、曲のイントロと共に会場のテンションは再び鰻登りに。

少女の名前はレイ・ローゼンハイム
彗星の如く現れた誰もが知る大人気絶頂アイドル。

さぁ歌って踊って叫んで!
ようこそ、世界最高の2時間へ!!

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