ふと気付いたら寝息を立ててるミケに、ベッドに腰掛けているリヴァイはそっと布団をかける。外で耳を澄ませば聞こえてくる虫の鳴き声。すっかり暗闇が支配している深夜に彼等は彼女の部屋にいた。たまには4人で話さないか、という誘いに承諾した3人。花の1つでも置いたらどうだを皮切りにどれくらいの時間が経っただろう。既に誘った張本人は夢の世界にいるのだが。小さなサイドテーブルには酒とグラスが3つ。それとハンジが持ってきた椅子が2つ。
「くっそー!飲ませれば良かった」
「やったら削ぐ」
「やらないよリヴァイが一緒にいる時は!いやー…それにしても」
「気持ち悪い顔向けんじゃねぇ」
ニヤニヤとリヴァイを見る。これは聞きたくて知りたくてたまらない顔だ。
「いつの間にかあなたのものになってたなんてねぇ」
「それがどうした」
「それはいいんだけど」
「私はお似合いだと思うよ」
「それは同感、で!?もうミケとは!?そこどーなの!?」
酒が入ってると…いや入っていようと入ってなかろうとハンジは気になる事があれば聞く性格故にそういう内容もあっけらかんと聞いてくる。エルヴィンはこうなった彼女は制止しても聞く耳を持たないと知っているので、ニコニコと酒を飲みながら2人の会話を聞いていた。そうやって何もしないで笑ってるのがタチ悪い。つまり今、一番面倒な人間2人を相手にしているのだった。
「主語を付けろ」
「ミケと!寝たか、寝てないか!」
「寝た」
「ぶはっ!あっさり白状した!」
「黙れクソメガネ、起きたらどうする」
「どんな感じだった!?裸は綺麗で可愛かっ、ぐへぁっ!」
容赦なくリヴァイがハンジの頭をひっぱたく。声よりもその音に対してミケが起きやしないだろうかとエルヴィンは全く違うことを思っていた。
「そこまで教えてやる義理はねぇな」
「えー!!」
「ハンジ、そこから先はプライベートだ」
「でもエルヴィンも気にならない?」
「とても気になる」
「タチ悪過ぎだぞテメェ」
「お前は変わった」
「…へ?急にまた」
どういう事だと言わんばかりの2人の視線にエルヴィンは良い意味でと付け加える。何が?上手く納得させる様な説明を持ち合わせていないから私1人が思ってる事だと片付けてもらっていいんだ。お前は変わったよ。
ミケがいつ戻るか誰にも分からない。明日かも、今かもしれないしこのまま死ぬまで女のままかもしれない。私はそれなりに長く付き合ってきた間柄だからこそ、
「大切にしてくれ」
「…いらぬ心配だが聞いておく」
「……あーなるほど、確かに変わった」
言われてしっくり来た。
寝てるミケの頭を撫でるリヴァイの目。
今までだったらあんな優しそうな目、見る事なんてなかった。やっぱりエルヴィンはよく見てる。きっとリヴァイならミケが男に戻っても好きだろうからもう結婚しちゃえばいいのに。その言葉は言わず酒で身体の奥深くへと流し込んだ。
その目見てると伝わってくる。
「リヴァイ」
「なんだ」
「ミケのこと、本当に好きなんだね」
答えない代わりに寝顔を見つめる。
言動は前と全く変わらないが変わった、それについて否定はしない。俺は変わった。
じゃあ今のあなたにこわいものなんてないんじゃない?だってある?
こわいもの…あぁ、言われてみればそんなものねぇな。このクソな世界でも生きていける気がした。
「コイツがいてくれるなら」