「この音うるさいな」
「仕方ないさ、相手も必死なんだろう。行くぞレイ」
「うん」

4人のイーターは本部内を進む。その長い廊下には心臓を抉られた死体、頭皮が引き剥がされた死体、手足や首が引きちぎられた死体が幾つも転がっていた。

緊急警報が調査兵団内に鳴り響き言葉にできない緊張感が兵士達に降り掛かった。部下からの無線を聞きながらミケはアルマを装備していく。

「侵入を許したか」
「本部のシステムをハッキングしたってこと、ですか?そんな事出来るわけが…」
「とにかく抹殺が最優先事項だ」
「了解」
「了解です…!」

生きて帰って1人前は終わりだ、死ぬなよ。
肩をポンと叩くと部屋のドアが左から右にスライドしていく。真っ先に銃を構えたのはミカサだった。ドアが開き切るとそこには般若と天狗の面を付けたイーターが立っていた。

「イーター…!」
「もう此処が…!?」
『あれ?司令部じゃない』
『道間違えた』
「死ね!」
『おっと』
「!もう1人は…」
『余所見厳禁だよ』

変声機から出るノイズ音。
ミカサが撃ち込んだ銃弾は当たらず後ろの壁へとめり込む。気付いた時には天狗が兵士の1人を盾に取りミケ達の背後へ回っていたが、殺すという行為は1つの銃声に阻まれる。

「分隊長…!」
「コイツ等は俺が殺る」
『いったー…片腕吹っ飛んだ』
「先に行け、一番近い班と合流しろ」
「ですが…っ!」
「命令だ、行け」
「…ご無事で!」

1つ頷くとミカサ達は部屋を出て行った。
ドアを閉めホルスターにしまうと大きな溜め息を1つ。

『はぁ〜タメ口疲れます』
「道は教えただろう」
『バカミケ!案内の仕方が悪い!』
『えへへ、レイさん達と別れてから先輩が先走って』
『はぁ!?』
『野太いノイズだらけで笑える』
『レイもだから!』
「そっちはどうだ」
『調査兵団の兵士なだけあって素晴らしい脳味噌をしているよ。味もいい』
『黙れよ変態!』「そうじゃない」

警備の数がすごかったけどハッキングのおかげだねと返す。レイは調査兵団の中でも特に機密事項を保護する部屋にいた。エルヴィンは本部内のどこかで1人マイペースに脳味噌を捕食しているようだ。歩く度に血を踏む為、常に靴と床の間に粘度のある糸が引いた。次々と鍵のかかった引き出しをこじ開け掴んだ資料を床にバラ撒いていく。その表情は楽しげながらもどこか狂った様に見えた。

全部なくなれ。機密事項なんざクソ喰らえ。
全部なくして全部壊して殺してやる。

『もうすぐ終わる。ちなみに司令部はやっとい「そこまでだ!」

動かしていた手を止めるとゆっくり声の方へと向き直った。瞳の色を赤に変える。エルド、グンタ、オルオ、ペトラ、エレン。リヴァイは…別行動でもしてるのかな?

『5対1か』
「動くな!」
『言われた通りにするけどさ、でも額に気を付けないと』

突如大きな銃声と共にグンタが前のめりに倒れ、その額からは鮮血がドクドクと溢れ出した。吹き抜けの死角でハンジは1人ガッツポーズを取る。

『こうなる』
「グンタさん!!」
「エレン、構えろ!」
『いっひっひ命中命中!久しぶりのライフルやっぱ楽しいなぁ♪』
『援護よろしく』
『はいよー!』
「来るぞ!」


「え…?」


エレンは目を疑った。来るぞと言われてからまだほんの数秒しか経ってないのに。なんだ?2、3発銃声がしてその後何があった?なんで、エルドさん達が?なんで。

心臓 取られて 倒れてんだ…?

外套に飛び散った血を払いながらレイは目の前で1つまた1つ心臓を握り潰し身体を蹴り潰し引きちぎる。ぐちゃ、ベチャッ…グチャグチャ。それを終えると倒れたエルド、オルオ、ペトラの3人の武器をエレンの足下へと蹴り渡す。殺れるもんなら殺ってみろという意味で。無線でじゃあ戻るねとハンジの声が聞こえた。

「…そ、んな…!殺す!!」
『弱い子の心臓は取ってあげない』
「!!」
『俺達からアニへの仇、どうだった?』

大丈夫、下は生垣だから死なない。間合いを一瞬で詰められた。引き金を引く隙すらなく腹を蹴られ吹っ飛んだ先、背中に当たったガラスが粉々に割れエレン共々下へ落ちていく。苦し紛れに撃った銃も空を掠めるだけ。落ちていく中で最後に見えたのは、狐の面が手をヒラヒラ振っている姿。

凄まじい落下音にレイは吹き出す。まぁ骨折くらいは経験するといいね。アニを殺した報いはだいぶ受けてもらったし、そろそろお暇しよう。

『レイ、時間だ』
『なんて思ってたけど』
『どうした』
『俺だけ帰り遅くなるみたい』

先帰っててと一言伝えレイは無線を切る。

「おいバケモノ、テメェは確か色々なやり方で人間を殺してるが…あれは楽しかったりするのか?」

狐の面は首を傾げるだけだった。

『それはもう、とっても』

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