【忘却の物語主人公】


「おいしいね」
「そうだね」
「エルヴィン入るよー…ん?何食べてんのってうぉぉぉなんじゃこりゃあ!!」
「分隊長!驚き方が古典的過ぎます!」

エルヴィンとレイが仲良く食べているお菓子に目ざとく反応したハンジとツッコミのモブリット。2人が食べているのはウォール・シーナで人気のあのお菓子。よく見れば、いや見なくともエルヴィンの机には赤い箱がどっさりと積まれている。聞けば資金を援助してくれている貴族が良かったら、との善意でくれたのだとか。理解はしたけど凄まじい善意だなコレ。そもそもなんでこんなに…あ、そういえば今日は。

「ポッキーの日でしたっけ?」
「うん、ハンジとモブリットも食べよう」
「いいの!?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「いっただっきまーす!」

レイが箱を1つ差し出すと犬の如く喰い付いたハンジ。うんめぇぇぇ!分隊長!もう少し人間らしく食べてください!2人が4人に。

「あぁぁあぁ疲れた!」
「優秀な補佐官がいて助かる」
「そう思ってるなら労いに菓子の1つや2つ買ってよー」
「ミケ、ナナバ」
「お?レイ何食べてんの?」
「ポッキー」
「良かったら2人も食べないか?」
「食べる食べる!」
「ミケもあげる」
「久しぶりに食べるな」

入って来た彼等に赤い箱をどうぞと差し出す。書類との睨めっこで疲れていたナナバにはありがたいプレゼントだった。ミケにも渡しレイはそのまま彼の膝の上によじ登る。4人が6人に。

「入るぞ」
「おっ!来た来た」
「何してんだテメェ等」
「今日はポッキーの日だからみんなで食べてたんだよ」
「揃いも揃って暇なのか」
「リヴァイ」

同じように箱を差し出す。おつかれさまです、の一言を添えて。エルヴィンは目頭が熱くなっていた。レイはなんて優しい子なんだ…!親バカは本日も絶好調である。

「一緒に食べよう?」
「……仕方ねぇ」

箱を受け取ったリヴァイは中を開けた。1本食べてみる。…ほう…コレはなかなかに美味いじゃねぇか。そしてもう1本。レイはそれを見て嬉しそうにまたポッキーを食べ始める。6人が7人に。

「それにしてもどれだけ貰ってんだ」
「これもう箱じゃなくて山だよね」
「そうだ」

するとレイはミケの膝から降りると、机の上にあるポッキーの箱を抱えられるだけ両腕に抱えた。

「とどけてくる」
「届ける?」
「ペトラにオルオに、エルドとグンタでしょ?エレンたちにも、みんなに」
「それいいね!私も行っていい?」
「うん」
「それこそみんなで行こっか!」

ナナバの提案にレイは笑顔で頷く。
調査兵団全体がチョコレートの香りに包まれるのはあと数十分後のお楽しみ。

みんなで食べると美味しいね。



よく言えたねレイ!素晴らしい!
はい来た親バカ!!

- ナノ -