「みんな死んでるねぇ」
「雑魚がやったとは思えないな」

廃材がそこら中に置かれている工事現場に3人のイーター。ここは若者達が夜通し騒ぐ場所としてよく使われているのだが誰1人息をしている者はいない。死体死体死体。持ち主を亡くしたバイクが無数に止められていた。エルヴィンが死んだ若者の頭皮を引き剥がしいつもの確認をしていく。

「ま、私は食べられれば死んでてもいいけど」
「馬鹿そうな脳味噌だ」
「選り好みし過ぎだろう」
「違うよミケ、こだわりだ」
「そうか」

食べる?俺は内臓しか食べない。あっそう。チキンの様に腕を食べているハンジを横目で見たミケは辺りを見回した。数十人にも登る被害者。心臓だけが綺麗になくなっていてそれ以外の外傷はない。相当の手練である事は容易に分かる。

「それ俺がやったんだ」

突然の第三者の声に視線だけを暗闇に向けると、錆び切ったクレーン車のアーム部分にその人物は座っていた。自然と3人の目が赤くなっていく。時折イーター同士の衝突もある為に敵か味方か分からない以上警戒は怠れない。だがその人物は高さをものともせず軽々と飛び降り手をヒラヒラと振りながら近付いてきた。

「殺り合う気なんてないよ」

本当に戦う気などないらしい。戦意の欠片もないと判断したミケは目で2人に合図した。ソイツよりコイツの腕の方が美味しいからとハンジに投げ渡した1人の、

「うんめぇコレ!!ありがとう!」
「どういたしまして」
「男?女か?」
「男だけど」
「そう「君は心臓が好きなのかな?」
「うん、こだわ「素晴らしい!こだわりを持つというのがどれだけ意義のある事なのかよく分かっている、ちなみに私のこだわりは(略)」
「「「…」」」

彼は誰とも手を組む事なく今まで生きてきたらしい。まぁこれ程の戦闘能力があれば逆に1人の方が気楽だろう。聞けば第2区の路地裏の更に奥にある場所でカフェをやっているのだとか。カフェ?

「もしかして…アンダーワールド?」
「そうそう」
「思い出したあれだよミケ!リヴァイが常連のとこ!」
「…あぁ、前に言ってたな」
「そうだ、どうせなら今から店来る?」

ここで立ち話もなんだし。

「行く行く!ねぇもし良かったら手を組まない?」
「唐突にも程があるぞ」
「いいよ」
「ひゃっほい!じゃあ改めてよろしく!私はハンジ、このデカイのがミケでおしゃべりがエルヴィンだよ」
「いいのか?」
「うん、人間の仲間は1人いるんだけどイーターの仲間はいなかったから」

それに退屈してたんだ。1人よりみんなで殺った方がもっと楽しくなると思うしね。彼はミケに右手を出した。これは数年前のあの日の話。

「俺はレイ・ローゼンハイム、よろしくね」


*


「それ…本当なんですか?」

アニが死んだと事の次第を聞くや否やナナバは椅子を蹴り飛ばしたがレイは特に気にすることもなく頷いた。有り得ない。嵌められたんだ。アイツがそんなヘマするはずない。怒りに震えるその肩をエルヴィンが軽く叩く。

「もう少し待て」
「はぁ!?これ以上無理!今すぐぶっ殺しに行かないと気が済まねぇんだよ!!」
「よし来た」

レイは手元の画面を見る。

「出来たって。さすがブラックハッカー、仕事が早い」
「どこが!あのデカブツ時間かかり過ぎだろ!」

いやぁ調査兵団のセキュリティシステムまでやっちゃうとはすごいね、イーターでハッカーで特等捜査官とか本職どれってツッコミたくなっちゃうよ。楽しそうに喋るレイはサシャの頭をポンと撫でた。彼女の真っ赤に染まった瞳がその怒りを物語っている。

「その気持ちは着くまでとっときな」
「レイさん…」
「2人は?」
「立場が立場だから臨機応変にって言っといた」
「素敵な脳味噌に巡り会えそうだ」
「うるせぇ変態!」
「じゃあそろそろ行こうか」

今夜はきっと、それは楽しい夜になる。


【色欲 レイ・ローゼンハイム】
SDSの1人、ランクSSS+
調査兵団で最も危険視されているイーター。その戦闘能力は類を見ない高さを誇る。人間の心臓だけしか狩らないもののごく稀に憂さ晴らしや楽しむために殺すことも。実質SDSのリーダー的存在ではあるが本人に自覚はなく皆と楽しく殺れればいいと思っている。元調査兵団研究所所長の両親と死別後アリソン・レネに引き取られリヴァイと共に孤児院で育った。誰に対しても穏和だが一度タガが外れると暴走する。

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