リヴァイ兵長を知りませんか?

どうしても早急に渡さなければならない書類を部下故か任されてしまいエレンは彼をひたすらに探していたがいなかった。どうして見つからない。おかしいだろ。兵舎にいないわけではないのに。途中聞いたハンジさんから『小さいから見えないんじゃない?』いや、そんな事言えるのあなたくらいですから。
もしかしたら本当に小さいから見えないのか?なんて思いながら歩いていると一番知っていそうな人物と曲がり角でばったり。

「!エルヴィン団長」
「?」
「リヴァイ兵長を知りませんか?何処にもいなくて」
「何処にも?…となると」

それから教えてもらった通りの場所を目指してエレンは歩いていた。確かに、普通に兵舎歩いていたら気付かないよなこんな狭い通路。このまま道なりに進んでいったら開けた場所に出そうだが…本当にこんな所にいんのか?

「あ」

本当だった。
開けたその場所には彼等がいた。
兵舎の壁に寄りかかり座っているミケと、その膝に頭を乗せて寝ているリヴァイが。それなりの足音がしたにも関わらず彼が起きることはなかった。兵長が…寝ている。あの兵長が。初めて見るその姿。安心しきったように。ミケはエレンの方へと振り返ったがその手はリヴァイの頭を優しく撫でていたのだろう。その2人はどう見ても。

「…」

なんだよ。おかしいよな。心の何処かで分かってた筈なのに。やっぱり目の当たりにすると、つらいもんなんだな。

「エレン」
「…」
「どうやって?」
「あ、いや…その、場所は団長に教えてもらった。兵長にこの書類渡してくれって言われて」
「そうなんだ」
「…お前」
「ごめんね」
「謝る必要ねぇだろ」
「ごめん」
「…俺さ、」

もっと早く伝えていれば、もしかしたらこうならなかったかもしれない。だからこれは誰が悪いとかないんだ。動き出すのが言い出すのが遅かっただけ。でもせめて悪足掻きな感じで言わせろよ。お前とは少しの間しか付き合いないけど、そんな短い中でいつそんな気持ち生まれたんだろうな。気付いたらかな。とにかく俺はお前が好きだったよ。どうしようもない程に。

「お前が好きだった」

見上げた瞳に真っ直ぐ見つめられる。ミケは控え目に笑ってただ一言『ありがとう』だけを俺に言った。あぁこれで、コイツに恋することはもう出来なくなる。でもどうしても繋がりを消し去りたくはなくて我侭に友達ではいてくれんだろって言ったら、もちろんと。最後に手を差し出したら握ってくれた。零れ落ちたモノと一緒に。

それだけで救われた気がした。

「探したよエレン!」
「悪ぃ、急用だったから」
「エレン」
「なんだよ」
「目が赤くなってる」
「あぁゴミ入っただけだ」

決して泣いたわけじゃない。
誰も知らないほんの短い恋を、終わらせただけ。
俺とアイツと醜い程に晴れ渡った青空だけが知っている短い恋を。

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