そこはいつも太陽の光が木々の隙間から優しく降り注ぐ緑溢れる霊園。レイとリヴァイは親として自分達を育ててくれた『アリソン・レネ』の墓の前に立ち花を手向ける。イーターに捕食され命を落とした彼女。心臓だけがない状態で見つかり直属の部下でもあったリヴァイは、助ける事が出来なかった事を今でも鮮明に思い出しては悔やんでいた。あの時自分が一緒に行動していれば、選択を間違えていなければ死ぬことはなかったはずだ。なのにどうして。思い付いたらキリがない。墓を見つめる幼馴染みをレイは問い掛けた。

「リヴァイ」
「…」
「強かった?」
「俺が知る中で最強の兵士だった」

特例として半年足らずで訓練兵団を卒業したリヴァイ。調査兵団の何たるかを知った時彼女は既に優秀な特等捜査官だった。イーターに対する戦い方、知識、アルマの使い方、全てを教えてくれたのもアリソンだ。今や勝手に人類最強だなんだいわれてる俺が何に対しても敵わなかった。レイは相槌しか打たない。それは昔を懐かしんで語るリヴァイの邪魔をしたくなかったからだ。時に対人格闘で派手に投げ飛ばされ時に銃弾を顔面スレスレに撃ち込まれ、実戦で傷を負った事なんか1回もない。的確な判断と指示、高い戦闘能力。どれを取ってもすごかった。おかげで俺は訓練の際に肋骨折られたが。

気になったからいつか聞いた事がある。あまりに強いからその理由は何だと。薬でもやってんのか?見事にアリソンから拳骨を喰らった。

『リヴァイとレイがいるからだよ』
『意味が分からねぇ』
『大事な家族がいると強くなれるの、それだけ』

2人は霊園の中をゆっくりと歩き、レイはその答えは彼女らしいなぁと笑っていた。昼過ぎになるのに今日は珍しく無線が入らない。いや、もしかしたらイーターが出現しているかもしれないが『滅多にない休日なんですから』と言ってくれた部下達が配慮してくれてるのかもしれない。本当にオルオ達は気が利くね、今度ご馳走してあげなきゃな。こんなチビの部下させておくのは勿体ないよ。レイに拳骨、は認めたくないが身長の関係もあり膝裏を思いっきり蹴り飛ばすだけにしておいた。
とりあえずいい歳こいて『ギャー!』は気色悪いからやめろ。すかさず少しでも若さを保つためだから!と反論された。馬鹿か。レイは痛む膝裏を押さえて俺を見上げる。

「まだ信じられなくてさ」
「俺もそうだ」
「死んだなんて。そのうち帰ってくる気がしてならない」
「殺したヤツを必ず見つける」
「それで?」
「殺す」
「だよね、俺でもそうするもの」
「いつまで痛がってんだ」
「チッ!バレたか」

立ち上がると思ったら草むらに座り込んだ。何してんだ。疲れたから。木漏れ日がレイの髪を照らす。ピクニックしたくなる天気だねと呑気に話している。相変わらず男か女か分からねぇ顔しやがって。と思ったら次は俺の方に手を伸ばしてきて、何処ぞのチビに膝裏を蹴り飛ばされたから立てないと。イーター殺す前にテメェを殺してやろうか。深呼吸と変わらないレベルで大きなため息をつき手を差し出す。握ってきたレイの手は思っていたよりも冷たかった。

「っと、ありがと」
「調査兵団に入りたいと思ったことねぇのか?」
「ないね」
「即答ときた」
「アリソンはヒーローだよ、調査兵団なんかの前に俺達のヒーローだ」
「なんだ急に」
「なぁリヴァイ」

お願いやめて!ここから出して!
もう少しで完成か…
何を…何をしようとしてるか分かっているんですかローゼンハイム所長!
これは人類をイーターから守る為に必要な事だ
レイはあなたの子供でしょう!?
私達がどうしようと勝手だろう。今回の件は機密事項として厳密に扱え
ですが…っ!
これが私達の正義だ。


「よく知っている人の目を見たら自分の知らない人間に変わっていたってこと、ある?」


怒りとも悲しみともいえないレイの視線。


「…さぁ、あったかもな」
「そっか。何か腹減った。リヴァイの奢りってことで」
「どうしてそんな事聞く」
「ドラマの受け売り」
「くだらねぇ」
「ぐはっ!尻蹴った…!」

お前は頑張ってイーター殺し続けてよ。そしたら憎き仇にいつか会えるからさ。
まぁ戦闘能力皆無の勘だけどね。


【調査兵団研究所】
抹殺及び捕獲されたイーターからのサンプル採取や解剖、研究、アルマ製造など日夜最新の機器を駆使し兵士達のサポート全面を担っている組織。功績を残す傍ら公表出来ない実験をしている事もあり、世間にはその実態をあまり知られていない。訓練兵団を卒業した後、更に難解な試験に合格した者だけが入所を許されるエリート組織でもある。コニーは血反吐を吐き散らす程に勉強したらしい。現在の研究所所長は知る人ぞ知る変態ハンジ・ゾエ。

- ナノ -