今夜部屋に遊びに行ってもいい?
トランプと苦労して手に入れたらしいワイン、グラスを持ってハンジが部屋に着たのは日付が変わる頃だった。約束の時間からとうに30分以上過ぎていた事に対してはもう何も思わない。だが生憎家具はベッドと真横にある存在感を感じない小さなサイドテーブルしかないのでそこに置いてもらう。思わず「良く手に入れたな」と口から出てしまう程の銘柄だ。

「って言い付け!守ってない!」
「?」
「部屋では服着なさいって何回も言ってるじゃないかーもしもの事があった時に「暑かったから」え?あーそーね、今日の夜はそれくらいがちょうど「トランプ?」なんかトランプしたくなったから持ってきた「そうか」ほらほらミケも座りな!」

早速ベッドの上に座ってトランプを切り始めるハンジ。足の方に座ってるから俺は枕側の方に腰掛けた。4人でポーカーをする時も大抵ハンジがトランプを切ってるな、意外とエルヴィンは切るのが下手で前にテーブルの上に豪快にバラ撒いたことが…すんすん。

「俺達だけか?」
「リヴァイも連れてくれば良かった?」
「どうしてそうなる」
「だって、ねぇ?あはは!」
「ハンジ」
「何でもないよ、どーぞ」

結局服については今は私達だけだから良しとするで許された。最初のゲームはババ抜きの様で配られたトランプからペアになってる同位の札を探して2人の間に捨てていく。それにしても何故リヴァイの名前を出したんだ。アイツの事は何も。ふと思い出されるあの光景。
俺の手のひらをリヴァイは舐めた。
汚いからと散々言っても止めることなく舐め続け、その時俺は怒らず殴らず蔑む事すらも出来ずおかしいくらいに何も出来なかった。むしろ段々と恥ずかしくて、照れていた。誰にも言えないが確かにそんな俺がいたんだ。そしてリヴァイの目はいつもと違って怒ってる様な。違う、あれは怒ってるよりも思い違いでなければ「ミケ?」
「!」

ハッと気付くとニヤニヤしたハンジがいた。
察しがいいからニヤついてるんだろうが。

「ニヤつくな」
「考え事してたね?」
「してない」
「してた」
「……少しだけ」
「素直でよろしい、では始めよう!」

お好きなの引いていいよ?
根掘り葉掘り聞かれるかと思ったが回避できたみたいだ。気を取り直して目の前の札に手を伸ばす。引き抜いた札と手持ちから合わさった2枚の札を捨てる。ハンジはカードゲームの類に強い。といっても俺達もそれなりに出来る方ではあるので毎回誰かが圧倒的にスられる事はないが。だからたった2人だけのトランプ大会でもつまらないと感じる事はなかった。

「(すんすん)」
「ちょ!?においで当てんのなし!」
「においがあるわけないだろう」
「だよね!?あー良かった!それと右だ右」
「わかった」
「あ!うへぇ…絶対引かないと思ってたんだけどやられた」
「俺の勝ち」
「その勝ち誇った顔!これでも喰らえ!」
「わ」

身を乗り出して頭をグシャグシャと撫で回される。そんなにされたら髪の毛が全部抜ける。大丈夫だよ顔可愛いんだから!可愛くないやめろ、と言うつもりで腕を掴んだら俺よりも全然強そうな腕をしていたので驚いた。ある程度したら落ち着いたのかサイドテーブルに置いてあったワインをぞんざいに開けグラスに注いでいた。すんすん。待て。お前は乗り出した際にベッドの下に落ちたトランプを拾うのが先だろう、という愚痴は何処かに置いておく。

まとめたトランプを切って今度は神経衰弱!とのリクエスト通りに札をパラパラと適当に置いていけば既に飲み始めていた。食堂から何かかっぱらって来れば良かったかな、失敗したー。お前はその前に…違うな、ここはむしろいつも通りと安心すべきか。

「おおっ!コレ本当に美味い!」
「飲む」
「真面目に、ほら!どう?」
「(すんすん)……美味しい」
「でしょ!?4人だったらすぐなくなるだろうからさぁ、今日はミケと2人で良かった」
「内緒にしておく」
「是非ともよろしく!」
「次はお前から」
「よーし張り切っちゃおっかな」

ワイン片手に始まる神経衰弱。
3杯目と順調に飛ばすハンジが捲る札を忘れないように頭に叩き込む。俺も残りを飲み干す。賭けているモノは何もないがハンジが勝てば高確率で『1つ頼みたい事があるんだけど』が来る。大体巨人の実験関係の事柄で。今回もそうだと思う、たぶん。だから負けられない、というよりただ負けたくない。

「(また外れた)」
「なんかさ、未成年に飲ませてるみたいに感じる」
「そう見えるだけだ」
「分かっちゃいるけど…お!神経衰弱は調子いい感じ、また貰いっと」
「…ん」
「あれ?弱くないのにどうした?」

まだ1杯しか飲んでいないのに。
急に身体がポカポカしてボンヤリする。
座ってるのがつらくなり横になった。
酒は弱くないのに。女になったから?

「もしかして体質変わっちゃったのかな?」
「どうだろう…」
「とりあえずこぼすとアレだからグラスはこっち置いておこう」
「うん、ハンジ」
「?」
「この前…リヴァイが、手のひら…舐めた…」
「知ってる」

ミケの身体の両側に両手を着くと自然と見下ろすような体勢になる。片方の手で髪を梳くように撫でれば気持ち良さそうに目を細める姿が可愛らしい。知ってる、だって本人から聞いたもの。ハッキリと言ったわけじゃないけど、あの話の流れじゃどう聞いても舐めたんだなって話し方してたよ。私も面白くなったから「美味しかった?」って聞いたら「教えるわけねぇだろ」だって。別に横取りなんてする気ないんだから教えてくれたっていいのにね。横取りはしない、でも今のミケ見てたら少し悪戯したくなっちゃうかな。

下着越しに胸に触れてみた。やっぱり大きい。胸、腹、腰へと手のひらを滑らすように這わせていけばピクッと反応する。そのまま下半身へ。これも下着越しに秘部に触れれば反射的に足を閉じようとした。といっても足の間に私の身体あるから閉じないんだけど。眠気も強まってきてるのかそれ以上の動きがない。可愛い。顔を一気に近づける。ミケの綺麗な瞳。今だけ独り占めしよう。

「っハンジ…?」
「すっかり反応が女の子だねぇ」
「…ちがう…」
「違くないでしょ?ここにいるのが私じゃなくてリヴァイだったら今頃食べられてたよ?」
「リヴァイ…?」

あ、コレはもう半分以上寝てる。
逆に好都合とも言えるか。
髪を撫で続けながら話す。

「まぁ近いうちにって気もしないでもない。あくまで私の憶測だけど」
「ん…?」
「見ててもどかしいんだよなぁ」
「ハンジ…眠い…」
「そうだね」
「…トランプ…ごめん…」
「いつでも出来るから気にしないで、それよりも狼には気を付けな」
「狼…」
「そ、調査兵団にいるんだ」
「…どんな、狼…?」

眠いのにしっかり謝ってる所が女になっても変わらずミケらしい。って思ってたら寝ちゃった。小さくスースー寝息立てながら寝てる。こんな近い距離にいるのに本当に無防備なんだからこの子は!しかしこんなにアルコールに弱くなってるとは思わなかった。でも可愛いの見れたからいっか。最後にミケの額に1つキスを落とした。おやすみなさい。

「あなたの事が好きな目付きの悪い黒狼」

ね?リヴァイ。

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