調査兵団研究所内。
イーターに対して日夜最新の機器を駆使して研究が行われている施設に白衣を着た3人はいた。

「この話はここまでにしとこうか。次に私達が使うアルマはイーターを唯一抹殺できる武器だけど何で抹殺出来るかっていうと?そう!彼等から採取した細胞が武器の主成分に使われてるからなんだ。自分以外のイーターの細胞が脳内に入り込むと拒絶反応を起こす、それが彼等にとって死に至る致命傷になるからだね。弱点の額以外には足止め効果くらいしかないからまぁ最終的には捜査官のアルマを如何に使いこなせてるかっていう熟練度が重要になってくるわけでー、っていうのは2人も知ってる事でしょ?」

世間話程度と思って口から出たどの単語がイーターの返り血だらけの白衣を着た主任の『語り魂』に火を付けたんだ?と後悔と共に思い返すこと数時間。その間にぶっ放しで話す上司に対し何度相槌を打ったことか。ちなみに上記の話は訓練兵団にいる時に全て学んだ。学びました主任。ゲッソリといった表情を隠す事なくコニーが頷く。バカ頷いてんじゃねぇ!頷きは『その先をどうぞ話してください!』って事で解釈しちゃうんだよこの人は!!ほれ見ろ目が爛々と!……あれ?何で俺等ここに配属されるように志願したんだ?

「うんうん、そんでさぁーまた実験思いついちゃってその結果を新しいアルマ作成に使えないかなって思ってるんだけど、内容聞きたい?聞きたいよね!!?そうかよし!!じゃあ特別に2人には話すとしよう!」
「へ!?資料の作成あるんで無理です!」
「何時間経ったと思ってるんですか!」
「えぇぇジャン達冷たくない!?そんなの後でいいよ!資料死ね!」
「良くないです提出先リヴァイ班なんですよ!?資料に嫉妬しない!」
「え、あー期限過ぎるとうるさいよねリヴァイが、リヴァイが!謝ってんのに怒るし」
「いつもモブリットさんが謝ってる原因作り出してんの主任ですからね!?」
「うえへへへ」

何かと言えばクソメガネだもんな!少しは幼馴染みのレイの物腰柔らかさってか人を思いやる気持ち見習いなさいよってんだ。レイに愚痴聞きまくってもらお。分かった!なら話すのは明日にする!というわけで私は研究室にいるから何かあったら電話で知らせてね〜。

「おぉぉおぉぉ…!長演説…!!」

話したいだけ話した主任は白衣から専用のカードキーを出し、カードリーダーに通すと地下への階段を下りていった。誰も入れない地下。言っても無駄な事は承知だったが姿が消えるか消えないかで「白衣洗うんで出してくださいね!」と伝える。アレ何日洗ってないんだか。きっと洗うよりも新調した方が遥かに早いんだろうが。ドカッ!!と疲れを見事に音で表したコニーが自分の椅子に座った。今日は座って聞けなかったから特に疲れた。モブリットさんいいな、本部に報告だったらしくて不在だった。モブリットさんが羨ましくて仕方なかった。

「…ジャン、俺バカだけどよ」
「おう」
「主任のイーターバカっぷりも相当だと思うんだよな」
「凄い人なんだけどな」
「おう」
「資料の残り作ろうぜ」
「だな」


*


「ァ、が…ァ!!あガ…あぁ…!」
「ソニー!!イイコにしてたかい?」
「ぎ、あ゛ぁヴヴぁあ゛あ゛!!」

元々白かったであろう壁は一面乾ききったものや、最近付いたであろう妙に生々しく光る赤黒い血で染め上げられている。階段から降りてすぐ部屋のド真ん中には本や資料、実験材料が山積みになってる机。その奥には手術をするような設備がありそれを取り囲むように鎖に繋がれ、もしくは檻の中に閉じ込められたイーター達がいた。

主任は真っ先に1体のイーターに近付くとうっとりした表情で話し掛ける。ソニーと勝手に名付けたお気に入りだ。唸ったり鎖を鳴らして奇声を上げたり、檻を蹴り殴りで暴れるで静かにしていないイーター達が殆どだがソニーは特にひどかった。最後にご飯食べたのいつだろうねぇ?大変だねぇ?お気に入りなのに主任はどこ吹く風だ。一つ笑いかけ机に散らばる書類を片手でバサバサと落とすと、その中から見つけた銃を手に取り品定めするようにイーター達を眺める。

「今日はレイの店行くんだ、誰か一緒にって君ら人間の食べ物は栄養にならないから意味無いんだったね〜」

バァン!!!

言い終わりに合わせて引き金を引く。
額に真っ直ぐ弾丸を受けたソニーが轟音と共に後ろに吹っ飛び暫く痙攣した後動かなくなった。指をパチンと鳴らし喜ぶとジャラジャラとソニーに繋がれた鎖を引っ張り死んだ事を確かめる。

「うぉすげぇ!今回の試作いいコレ!徹夜して作った甲斐があったぁ…!!」

この弾丸採用!早速モブリットに伝えて本部に通してもらおう!騒ぐイーター達を余所に引っ張る度にガクンと揺れるソニーの首を手で掴むと首筋に噛み付いた。ブチブチブチ…ッ!と肉片が千切れ口に収まっていく。クチャ…噛む度口から赤黒い血が滴り落ちる。

「私が見てるのに他のイーターなんて見るからお仕置きされちゃうんだよ?」

そのまま腕や足にも噛み付く。やっぱりお気に入りなだけあって美味しいなぁ!もう1体お気に入りのビーンがいたけど食べちゃったんだよね、私が。レイにこの美味しさを前に熱弁したらそれよりもっと美味しいモノがあるからやめなさいと、冗談と受け止められそう言われた。好みはホント人それぞれだ。
数分して食べ飽きた主任は所々貪り尽くした亡骸をイーター達の前にベチャッと投げ捨てた。少しでも食料に近付こうとする様子を見て盛大に笑う。

「アハハハ!ここにあるよぉ?喰えるかなぁ!?素晴らしい!ね!共喰い!もっとやれ、やれ!!」

その時内線が鳴る。
ハイハイ〜今出ますお待ちを〜〜。
またバサバサと机の上のモノ達を雑に払いやっと見つけた内線を取る。

「はーい」
『お楽しみ中だったか』
「さっすが分かってる!!今ねソ『一昨日貰った資料で聞きたい事があるから来てくれ』
「ちぇ、あ!夜レイのとこ行くんだけど良かったらミケも来てって」
『終わり次第行く』
「はいよ、じゃあそっち行くね」

受話器を置くと先程よりも更に汚れた白衣を気にもせずに地下から出て行こうとする。だがその歩みは洗面台の鏡の中の自分と目が合った時に止まった。

「おおぉっと、危ない危ない」

白衣のポケットに手を突っ込み薬が入ったケースから1錠取り出し飲み込む。あと口元も拭いてっと。思わず笑っちゃった。

「じゃあみんな!戻って来るまでイイコにしてるんだよ!」

その目の色はもう赤くなかった。


【嫉妬 ハンジ・ゾエ】
SDSの1人、ランクSS+
調査兵団研究所主任。アルマの研究を前任者から引き継ぎ更なる成果を上げた功労者でありながら、人間は自分に捕食される為だけに生きているという固定観念を持つ変態マッドサイエンティスト。捕食の欲求をすぐ様抑える薬も独自に開発している為に調査兵団に正体はバレていない。自身の研究室にて実験・研究をしながら時に捕食までするが、普段も捕食時も対象がイーターになるか人間になるかだけの差でキチガイっぷりは変わらない。

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