朝一番第2区の端、路地裏を入り更に奥にあるひっそりとした佇まいの店。辺鄙な場所にあるが実際には多くの常連客を持っている。毎朝ここで朝食を取るのがリヴァイの日課になっていた。

『アンダーワールド』

2人席のテーブルが2つ、カウンター6席のこじんまりとしたカフェの店長を勤めているのはレイ・ローゼンハイム。サラダとオムレツ、トーストが乗った皿とお気に入りの紅茶を添えてリヴァイを迎えるのが逆にレイの日課であった。普段はBGMをかけているがこの時は何もかけない。カウンター越しの自分達の会話がBGMとでもいえばいいだろう。そういえば店の名前の趣味が悪いって言われたよなぁ、でも場所が場所なんだからむしろ合ってると思うけどなって反論したっけ。開店の準備を進めながらレイは思い出し笑いをしていた。

「そういえばこの前の新人さん」
「エレンのことか」
「そうそう、直々来てくれてるよ」
「性別がどうとか言ってたぞ」

レイは立派な男なのだが第3者からしたらどうにも性別不詳という結論になるらしい。聞き飽きたというかむしろ俺の代名詞になってるね、その言葉。どう見たって男でしょう。性別の区別もつかねぇんだ、これじゃ人間のとイーターの区別もつかねぇのかもな。こらこら、それは言い過ぎだろ。新人なんだから許してあげなよ。

「…イーターか、最近近所の誰かが殺られたって聞いた」
「そうか」
「何なんだろうアイツ等」
「さぁな」
「リヴァイも気を付けろよ、明日幼馴染みの葬式です皆さん集合〜なんて笑えないから」
「戦闘能力皆無のお前が言うな」
「あはは、それもそうだ」

人類最強だからねお前は。
その時リヴァイが耳に手を当てる。調査兵団内部だけで使われている特殊な無線機らしい。一般庶民のレイには到底分からない。

「こんな朝っぱらから何だ、…被害は?…了解だ、今行く」
「調査兵団て大変だなホント」
「美味かった。また来る」
「お粗末さまでした。行ってらっしゃいリヴァイ」
「あぁ」

数秒後に残るのはカウンターの上に残された綺麗サッパリのカップと皿。身を乗り出しそれらを取り上げて洗い終えればあとは開店するだけだ。入口の看板をクルリと回しCLOSEをOPENに変える。
(厄介な事になりそうです兵長、SDSです)
今日も平和に過ぎるといい。死んだらダメだよリヴァイ。水色の絵の具で塗り潰したような快晴の空にレイは幼馴染みへの思いを馳せるのであった。


【レイ・ローゼンハイム】
カフェ『アンダーワールド』店主。リヴァイの幼馴染みと同時に彼の過去を知る。とても温和な性格。何故か性別不詳というレッテルを貼られているが本人は言われ過ぎてもう自分に対する褒め言葉なのだと思っている。前述された様にイーターに対する戦闘能力は皆無なため、日頃から気を付けろとリヴァイに口酸っぱく言われている。

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