大通り。
両脇には様々な店が並ぶそこは、久遠一の繁華街とも呼べる場所。通りには色とりどりの短冊で飾られた大きな笹が等間隔に植えられていた。着流しを着たヒトガタのリヴァイと着物を着たレイ。
「綺麗ですね」
七夕とはたなばた祭りの略。五節句の一つ。天の川に隔てられた彦星と織姫が七月七日の夜、年に一度だけ会うという東洋の国の伝説にちなむ年中行事。葉竹を立て、女子が裁縫の上達などを祈った。星祭り。しちせきとも呼ばれている。
「もう何百年も見たぞ、この大通りの景色」
「飽きましたか?」
「お前がいるから今は違う」
「それなら良かった」
いつも贔屓にしている甘味処でも七夕にちなんだ菓子が売られていた。星の形をしているだけだが妙に目を惹かれたのでレイに買わせた。あなたが率先してお菓子を欲しがるなんて珍しい。俺が欲しいわけじゃねぇ、お前が欲しそうにしてたからわざわざ言ってやったんだ。ふふっ、そうだね。
賑やかな大通りを背に家路に寄れば寄る程空の輝きが濃くなっていく。
「でも最後には燃やすんだろ?」
「そうですよ。願いが天に届くように」
願いが天に届くように?
馬鹿らしい。
人間はくだらないことばかり。
普段は口にもしないくせにいざとなりゃ神頼み天頼み。何とも都合のいい生物だ。
だが、今はどこか違った。
空を見上げながら歩いていた足が止まる。
「叶うのか?本当に」
「リヴァイ?」
叶うのか?天に届けば願いは。
「…柄にもねぇな」
「何て書いたの?」
どうせなら書いていきませんか?願い事。
最初は渋々も渋々に受け取った短冊。
それでも気付けば真面目に願いを書いた俺がいて。そして叶って欲しいと願う俺がいた。
「レイとずっと一緒にいられるように」
「そう」
「お前は?」
「リヴァイとずっと一緒にいられるように」
「同じだ」
「そうですね」
あぁそうか。叶うのか。
いや、もう叶ってるんだ。
よかった。それだけ分かればよかった。
「星が綺麗。織姫と彦星は会えたと思う?」
「会えただろ」
「何百年もこの星空を見てきたんでしょ?」
「あぁ、そりゃ飽きる程に」
今はこんなにも新鮮で。
遥か天に伸ばした手にはいつの間にか星が握られてそうで。高鳴ったのは嘘じゃない。
レイが一緒にいる。それでいい。
「……来年もまた」
「はい、一緒に願い事書こうね」
「そうだな」
天にあっては比翼の鳥となり
地にあっては連理の枝とならん
「ねぇリヴァイ」
「ん?」
好きだよ。あなたのこと、
いつまでも大好きだからね。