あ!ジャンくんおはよう。
おっ!?はよう、ございま…あれ、アークデーモンの姿が…?
ミカサは親戚の結婚式で休みなんだ。良かったら途中まで一緒に行きませんか?
イかせ…行かせてください!
(ハッ…!1日アイツがいないってことは…もしかしたら…いける?言え、誘え俺!)
あの!そ、の…もし良ければ…
「じゃあ約束出来たんだな!?」
ジャンは突っ伏したまま返事として拳を高く突き上げた。昼休みになった今でも感動で震えているらしい。机がガタガタいってる。
(うん、遊びに行こ?じゃあ放課後ローゼの方に行くね)
「レイちゃんとデートだってよおい!」
「だから俺より先にちゃん付けやめろデートであって欲しい」
こっちに来てくれる理由はローゼの方が駅に近いからだ。迎えに来てくれるのは嬉しいけど二度手間になっちゃうからという聖女のお心遣い。
「俺達がいつも寄ってる場所にレイちゃん連れてくなよ、女子が行く所調べとけ」
絶対女子と絡んだことないお前らには言われたくない。デカい口叩きやがって…でもこっちもそうだから結局プラマイゼロ。
「だァーから!ちゃん付け羨ましい呼びてぇ無理恥ずかしい!」
「良かったじゃないか。レイちゃん小さくて可愛いからジャンとお似合いだよ」
「んだとふざけんなコノヤロー…え、そ、そうか!?」
ベルトルトお前ってヤツは…!
明日購買奢る約束してやった。
「AVとエロ本の話しそうだなお前」
「誰がするかしねぇよバカ」
「俺と話の練習しとくか!?」
「こんな声のデケェ女子と話すなら死んだ方がマシだわ」
「あ、駅近くに美味しいパンケーキの店があるらしい。ほら」
こ、この間に…調べてくれた…?
ベルトルトお前ってヤツは…!!
明後日も購買奢る約束してやった。
*
人気のカフェに男子高校生と女子高生。
ついに来てしまった放課後。
至福の、時、が!!!
レイさんはストロベリーパンケーキ、緊張から『水!』と最初注文してしまったがちゃんとノーマルなパンケーキを頼めた。
「すごい来たかったんだ」
「っす」
「なんだかデートみたいだね」
「ぶふぉあッ!」
「わ、だ、大丈夫…!?」
何の問題もありませんと言いながらも俺は黙って身を乗り出して口元拭いてくれる彼女に任せっぱなし。恥ずかしさと嬉しさが混ざりっぱなし、優しさが身に沁みた。しばらくするとパンケーキが運ばれてくる。
「わぁ…!いただきます」
「…ます」
「ぁー…む、…」
「…」
(可愛い)
それよりレイさんが美味しそうに食べてる姿。笑ってて幸せそうで、時々話し掛けてくれて。頬杖ついてそれ見れるだけですっげ嬉しいと思う。よほど熱中してたのかやっと見ていることに気付いたらしい。互いが小さく笑った。
「ふふっ、美味しい」
「ん」
「食べないの?」
「食ってる」
「ジャンくん」
そしたらフォークが口元に。
何故だか緊張感も何もない。まったく何も。普通に自然にしていられた。口を開けてパンケーキをパクリ。
「美味い」
「でしょ?」
「…来れてよかった」
「うん!」
「付いてる」
今度は俺が口元拭いたら彼女は照れ笑い。
だからその笑顔なぁ…反則にも程があるって言えたらどんなにいいか。
*
「あっ!あ、あ…!」
「えっ、おぉ!?」
ボトッ
「「あー…!」」
ハイテンションから一転どんより声。
(どうしても欲しい物があるの)
真顔で言われたから何かと思ったらレイさんが来たのはゲーセン。迷うことなく進んだ先にあったのはクレーンゲーム。そこにはデカい…一言で変なキャラがいた。触り心地がヤバいらしい。サンプルが置いてあったので触ってみたら確かにヤバかった。
「あと少しなのに…!」
大人しい女子かと思いきや白熱からのプンスカしててなんというギャップ、可愛い。
「やりましょう、か?」
「そんな、私が欲しいだけだからお金使うことないよ!だからね?応援をお願いします」
「ぶっ」
応援…やべ、可愛過ぎてつい笑っちまった。
気付いてないレイさんは再び100円投入。後ろから見守ってるだけなのになんだこの楽しさ。そして結果は大敗。確かにあと少しなんだよな…クレーンはぶっちゃけライナーの超得意分野だが…いける、かもしれねぇ。
「ちょっとやってみます」
「え…?」
「とか言って全然上手くはないんで」
まず縦が…こんくらいか。カチャカチャ。
次に横…後ろから見ててたぶんこの辺持ち上げりゃ…お?お??…あ、いったコレ。
ボトッ
「……どうぞ」
「あ、えっ?うそ…でも、」
「いや、今日の礼というか…」
「ありがとう…!じゃあ…この子名前あるけどジャンくんにしようかな」
「!?」
持ち帰るならそのキャラでなく俺にしてくださいとか思ってすみませんでした。
*
すっかり辺りは暗くなって、電車に乗り帰路を歩けばさすが繁華街とは違って静かだった。そこまで取ったキャラを抱き締められるとこっちも達成感がヒシヒシ出てくる。ちなみに連絡先は交換した。よくやった俺。
「楽しかったぁ」
「こちらこそ…どうも、でした」
「今度はミカサとエレンくん達も誘ってみんなで遊ぶのもいいかも!」
なんとまぁ…カオス確実なメンツ。
もう家の目の前。あっという間だった。
「改めて今日はありがとう」
「っす」
挨拶してそれぞれの家へ。
でも隣同士だから離れてても近いっつうかあったかい距離感。
「聞いてるか?マジでヤバかった…!」
『聞いてるよ。楽しめたみたいで』
「なぁ」
『うん?』
「彼氏…いたり、しないよな?」
『レイちゃんに?さぁ…僕はパンケーキの店くらいしか調べられないから』
「……怖くて聞けねぇ」
『お前にだけは言われたくないって言われるかもしれないけど』
想ってるだけじゃなくてそろそろ、動く時が来たんじゃないの?なあなあで終わらせたい?それはジャンらしくないと思うな。
どうしたベルトルトお前…なんでこんなに堂々と恋愛のこと語れるんだ。
『彼女いるからね』
「…」
『って冗談だけど。あれ?ジャン?』
時間は止まらない。
街も人も動物も止まらない。
そう、恋愛だって。
だから勇気を出して動けばきっと、