「此処が家?」

その家の中は大量の紙幣がバラ撒かれていた。足の踏み場がないくらいに。男はその上を何食わぬ顔で歩きベッドに腰掛ける。レイも彼の隣に腰掛けた。床に落ちてる1枚の紙幣を手に取る。

「それなりに殺してきた」

名のあるヤツも力のあるヤツも。

「だが死んだらこれだ」

どんなに多くの依頼料を貰って殺しても部屋が溢れかえる量にすら、ましてや床さえも覆い尽くせないちっぽけな量。この世界にいると生命の価値がどういうものなのかまるで分からない。

手を伸ばし白い頬に触れた。
撫でる度に長い髪が手に柔らかく当たる。
引き寄せ軽くキスしたら、あまり見る事のない色をした彼女の瞳が僅かに揺れていた。

「この世界に生命の価値はない」

死んだら終わり。それだけ。
向こうの平和で美しい世界とは違う。
誰の記憶にも残らない。
今度はレイがキスをした。そのまま2人はベッドに倒れ込む。

「だから今を楽しめばいいよ」
「ならこんな物騒なモンはいらねぇ」

男は遠慮なしにレイのドレスの裾から手を入れると両足のレッグホルスターを外した。

「銃は…サイレンサー付きの改造式」

あとは注射器数本、ナイフにメス。

「全部毒か」
「そうしないと通り名が泣くでしょ?」

恐らく刃先にも塗ってる。
ねぇそんな事よりも、手にしていたホルスターを奪われ遠くに投げられた。ガシャンと思ったよりも大きな音がする。私よりもあの子達をずっと見てたいの?まさか、言葉で言うよりもこんな時は身体で伝えるのが1番いい。付き合うと言ったからには付き合ってもらう。ちゅ、リップ音を1つ。

「よくもまぁ…俺より先に殺してくれたな」


*


「あっ…!そこ、っいい…もっと…」

生肌と生肌が当たるだけでこんなにも熱い。パンパンと秘部の奥に招き入れた肉棒が何度も突き刺してくる。外へと漏れる精液のあたたかさ。はぁ…とレイが息を出すとキスで溢れた唾液が口の端から伝う。名前を知らないから律動の最中、彼を抱き締めることで呼んだ気になっていた。ギシッとベッドが強く打ち付けられる度に軋んでいく。

「んっ…ぁ…っ!…すごく、っきもちい…」
「っそりゃ良かった」
「ぁ、また、っいゃ…私だけ…あぁっ…!」
「何度目になる?」
「はっ、はぁはぁ…わかんな、い…っ」
「それでいい。そうやって啼いてりゃ十分だ」

1度肉棒を引き抜くと快感に震えながら惚けたままのレイを力任せに四つん這いにさせる。手をベッドに付きこちらに何もかもを突き出している。挿入前だがいい眺めだった。それなりの回数をイかせたせいか濡れに濡れているのでわざわざ慣らす必要はない。宛がえば簡単に入っていく。

「ふっ、ぅあ…ぁ、ね…あなたは…っ?」
「ん?」
「イかな…っいの…?」
「お前次第だな」
「あぁぁ…ん、ぁんっ…だめ…ぇ…っ!」

何も我慢するな。感じるままに啼け。
時折話し掛けてくる声。律動。触れてくる手。その全てが気持ちいい。

「中…っ何度やってもキツイままか…」

クセになる身体かもしれない。

「っ!テメェ…っ、今締めただろ…」
「やぁっ…!ぁ、だっ…て…好きかなと…思っ、た…から…」
「あぁそうかよ…ますます気に入りそうだ…」
「ぁっ!んっ、んん…っ」
「ほら…」

こっち向けたら一緒にイってやる。
胸をやんわりと揉まれていたかと思いきやキュッと乳首が摘まれビクンと震えた。ゆっくりと捻り後ろを向く。律動は変わらない激しさなのに口付けは優しくてとろけそうになった。

「…ん、っぁ…!いっしょ…っ」
「言われなくても…っ分かってる…」
「んぁっ…!ぁ、イっ、ちゃ…!」
「っ!」

絶頂が2人を包む。風船が弾けたように次から次へゾクゾクと快感が追い掛けてくる。レイは注ぎ込まれ引き抜かれると同時に横になった。紙幣たちの…もうとっくに死んでしまった生命たちの上で繰り広げられた熱いセックス。息もままならない中で口付け合う音が妙にやらしく聞こえた。

「…ったくさん…イっちゃった…」
「それは気に入って貰えたってことか…?」
「ん…また、可愛がって…?」

セックス後の生ぬるい時間。
先程までの激しさを微塵も感じない優しさ。

「名前は?」

啄むようなキスに小さく笑みが零れた。
互いに馬鹿ではないし、これからもセックスしていくのであれば通り名で呼び合うのは萎えてしまう。

「…レイ、ローゼンハイム…」
「リヴァイだ」
「んっ…!」

首筋をふいに噛まれ軽く仰け反った。

「…前に何処かで…会った気がする」
「あなたと…?」

記憶の欠片が少しだけ疼いた。
覚えてるような。初めてのような。
突然リヴァイがレイの方に倒れ込む。

「!っ…お前…何した…」
「筋肉と関節の緊張…慢性的な睡眠不足ね」
「…ふざ…けんな…」
「大丈夫。簡単に言えば睡眠薬を飲んでもらったの。ぐっすり眠れるだけ」

抵抗する力も入らない程の眠気に襲われたリヴァイはやがて深い眠りに落ちた。額に1つキスを落とし寝顔を見つめる。
常に極度の緊張状態に自分を置いていれば無理もないことだが…せめて今だけでも休んでくれればいい。仕掛けたのは最初のキス。いいタイミングで効いてくれた。

「…何処かで…そうだね…」

きっと私達は会ってる。
でも今は。

「おやすみなさい、リヴァイ」

- ナノ -