「貴重な洋装姿の感想は?」
「…感想なんかありません」
「つれねぇぞ」
「!ち、ちょっと…何するの…っ」
「さぁ?」

リヴァイは首に巻いていたクラバットを引き抜くとレイの目元をそれで隠した。所謂目隠し。外そうとする両手を掴む。
人間が持つ視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
1つ失われると他の4つの感覚が鋭敏になるらしいぞ。

「知ってたか?」
「んっ…ぁ…!」

胸を触るだけでも反応が違う。
次に何をされるか分からないという事が快感を得やすいらしい。実際肌を撫でるだけでもピクッと動いて楽しい。

「へぇ」
「リヴァイ…っもう、やめて!」
「言うだけ無駄なの知ってるだろ?」
「だって、ここは…ゃっ!あっ…私たちの部屋じゃない…っ」

唾液を垂らした乳首を吸い上げる。
いちいち興奮させるような声出しやがって。
しかし何回抱いても飽きないレイの身体。そして目隠し…なるほど、これから抱く時は必須になるかもしれない。かぷりと耳を噛む。

「っ…だめ…!」
「これなら痛くしても全部気持ち良く感じるかもな?」
「おい」

リヴァイが舌打ちしながら顔を上げると入口には瓜二つの兵士長が。ツカツカとこちらに歩いてくる。一瞬力が抜けたリヴァイの腕を振り解いてクラバットを外しバッと上体を起こした。その顔は青ざめていて。だが彼はこの状況が誰によって作られたものなのかを直ぐに察したらしい。レイに対して責めるような視線は向けなかった。

「お前も大変だな」
「何の用だクソガキ」
「そもそも此処は俺の部屋だクソ狐」
「……あ?」

たかだか数十年生きたくらいの人間がクソ狐だと?最初に会った時から思ってたが…このガキは礼儀ってモンをまるで知らないらしい。今なら八つ裂き所か魂すら跡形も無く消せる。殺してやる。するとレイは妖気に気付いたのか俺達の間に割って入りクソガキに謝り出した。

「今日中に改めてお礼に伺います…本当に申し訳ありませんでした…!」
「する価値もな「リヴァイ!」
「聞こえねぇ」
「…礼か。それなら、」

自然な動きでレイの手のひらをそっと握ったリヴァイは手の甲に口付ける。

「これでいい」
「っこれで…いいんですか?」
「なら他に何して欲しいか言ってみろよ」

なぁ陰陽師様?

「それが最期の言葉だな」

なんとも滑稽な、目が合った。つまり瞳術はいつでも使える。俺の主に触った罰だ。途方に暮れる程の苦しみを味わえ。

「やめてください」
「殺すと決めた。気は短い方だ」
『八大地獄最下層 無間「いい加減にして!」
「!」

…どうなってやがる。
身体は動くのにどういう訳か気持ちが大人しくなっていく。額に貼られた1枚の札。
心底取りたい『意志』はあるのに何故かこれを『取れない』
文字を見て盛大な舌打ちが出た。クソガキがこれは何だとレイに聞いてるが距離が近ぇぞふざけんな。

「普通札は墨で書くんですがこれは血文字で書いた札です」

妖怪に対して大きな力を、特に契約した妖怪には絶大な力を発する。要はこれを貼られたら例え俺でも逆らえない。口では幾らでも反抗できるが身体が言う事を聞かない。それ程俺達の世界の中で『血』という物は強かった。

「外せ」
「戻りますよ」
「チッ、紙っ切れのくせして…!」

足が主の後を勝手に追い掛ける。

「クソ狐」
「なんだクソガキ」
「今度は俺が着物っての着てやろうか?」

お生憎様、青二才に着物は500年早ぇよ。


*


部屋に戻るとリヴァイはベッドの上で胡座をかき、またペンを使って手紙を書いてる主に何度目かの交渉を持ち掛けていた。

「外せ」
「外したら兵士長を殺しに行くじゃないですか」
「しない」
「妖術で殺す気なんでしょ?」
「馬鹿野郎、瞳術だ」
「ほらやっぱり」
「…」

大人しく座って反省していて下さい。また失敗。レイがこの札を使うということはかなり怒っている。ちなみに俺が反省する事等1つもない。そう返せば珍しく冷たい視線で睨まれた。

「…ふふっ、それにしても」
「笑う所でもねぇぞ」
「東洋でいう『きょんしー』みたいですね、可愛らしい」
「外したら覚えとけ、散々犯してやる」
「なら一生外さないのでご安心を」
「…」

コイツ楽しんでやがる。

「レイ」
「はい」
「お前が好きだ」
「私もリヴァイが好きです、大好き」
「…そうか」

照れてどうする。

「レイ」
「何でしょう」
「抱き締めたいから外せ」
「私は今の可愛いあなたを少しでも長く見てたいんです、大好きだから。だめ?」
「…仕方ねぇな」

しっかりしろ。
俺はコイツに甘い。だが札を貼られていても甘いとは…我ながらどうしようもない。
こんなやり取りをしている内にクソガキへの殺意は薄れてとにかく自由に動きたいの方が大きくなっていった。それよりずっと考えていた事を話そうと思う。

「レイ」
「ふふっ、次はどう来るんですか?」
「森にいたろ?着物着た子供」
「いましたね」

もしかしたら久遠に戻るきっかけが生まれるかもしれない。確証はないが。

「それが誰か、知ってるって言ったら?」

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