PM20:00

「…アイス食いてぇ」
「アイス食べたいな」

部屋着のままスマホを持って鍵持って、それから財布を持って。

「ちょっとコンビニ行ってくるわ」
「ちょっとコンビニ行ってくるね」

玄関開ければ?

「あ」
「ジャン…くん?」
「っ!?あ、いや…お!?」
「偶然!家隣だったんだ、こんばんは」
「ここここんば、んは…!」

な、何がどうなってる。目が点になった。
おいおいおいレイちゃん、さんとこんなにも家が近かったなんて何で誰も教えてくれなかった?ふざけんな。じゃねぇよ俺は重大な問題抱えちまったから。

「どうしてもアイス食べたくなっちゃって」
「!…実は俺もだ、です」
「良ければ…一緒に行きませんか?」
「イき、行きます!!」

コンビニはあっち。
俺達は駅の方へと歩き出す。

部屋着か?部屋着なのか?クソ可愛い。
ゆるめの長袖とショートパンツ。
白くて細くてクッッソやべぇ。
極め付けはNA☆MA☆A☆SHI
制服と違ってガードが薄い。決して変態じゃない。健全な意見を述べたまでだ。
ただ余りガン見してると俺のキルシュタインが巨人化する可能性特大なのでつらい。ガン見したいのにつら「ジャンくん?」
「だーっ!?…へ!?すんません何でしょうか!?」

隣を歩くレイ様、さんに声を掛けられた。身長差から自然と見上げられる。可愛い過ぎかコノヤロー。そんな俺のリアクションを見てふふっと笑い出した。

「何のアイスが好き?」
「ララララムレーズンですかね」

バカ食った事ねぇよラムレーズン。
チョコだろチョコ。見え張ってカッコつけたらとんでもねぇ名前出しちまった。

「大人だなぁ。私なんかチョコです」

チョコと言わなかった俺駆逐されろ。

いつも行ってるコンビニはもう目の前だ。
ダメだ前見て話さねぇとヤバイ。
横見たら完全にアウトする。
付き合っても友達程まだ仲良くもない女子見てアーッ!ってなったら、それもその事実がレイ、さんに知れてアークデーモンにまで伝わったら?殺されるだけじゃ済まない。殺された上に殺される。

「…好きならそれ食べるのが、1番いいってか、似合うと…思う、ます」

頭と身体が別の行動しやがった。
何言ってんだこの口は。
穴があったらケツから入りたい。

「…あの、」
「!!!」

な、何なんだ…!!
Tシャツ引っ張られた…だと…!?
緊張と嬉しさ超えてもはや意味不明の恐怖。
コマ送りのように首を彼女に向ける。
ガッチリ目が合っ、た。

「ありがとう」

おーっとその笑顔下半身にドストラーイク。


*


この時間帯は客が多い。
呑気ないらっしゃいませを背に早速アイス売ってる場所へと行く。デカデカとラムレーズンがあったが未知なるモンを食う勇気はないのでいつも食ってるのを手に取った。

「うーん…チョコもいいけど…」

イチゴかな、バニラかな、チョコミントも捨て難い。真剣に悩みながらちょこちょこ動き回って可愛い。

「ごめんなさい、早く決めるね」
「いえいえ全然これっぽっちもでした」

だから出てくる言葉。
変換狂ったスマホか。
しばらくしてコレにする。この味ね?今クラスで流行ってるのとレイさんは教えてくれた。

「じゃ、買ってきます」

彼女のアイスを手に取りレジに向かう。

「え?待って!いいよそんな…っ」
「あ、レシートいらないっす」
『ありがとうございましたー』

2つのアイスが入った袋を受け取りコンビニを出た。慌てて財布を出すレイさんにお代はいいですと遮る。ちなみに今の俺、何故あの様なことが自然に出来たのか数十秒前の俺に聞きたいくらいに心臓がバクバク。聞こえてないか心配なくらい。

「俺の…奢り、なんで」
「…いいの?」
「っす」
「じゃあ、」

ご馳走さまです、一緒に食べて帰ろう?

「ぎ、御意…!」

袋から出して食べ始めた。今日は不思議と味が分からねぇ。無味無臭。こっちは棒付きアイス。彼女はカップアイスだからスプーン使って食ってる。同じ道をまた2人。暑くもないし寒くもない。美味しいね、に頷いて返すことしか出来ない。けど何なんだこれ。さっきから変な気分。手首に通したコンビニの袋がカサカサ揺れる。

ふと差し出されたスプーン。

「どうぞ?」
「食べ…おぉ!?これ、をですか!?」
「せめてものお礼です」
「…あー…」

なるほど殺す気なんだなレイさんは。
これ関節キスじゃねぇか鼻血出るってのどうにでもなれと一口。

「…うまい」
「ふふっ、良かった」
「……食べ、ます?」
「うん!いただきます」

差し出したアイスに小さな口がパクリ。
いやこれもう彼氏と彼、

「…」

というかですね?えぇ、ゆるめの長袖ですからね?一瞬だけですが前屈みになった時水色チェックのブラジャー見えましたちゃっかり見逃しませんでしたガン見してすみませんでした。


*


「やべぇ…」

家に帰るなりベッドに胡座。
良かった、何とか間に合った。俺の身体は今お察しの通りになっている。元気だなオイ。我ながらアッパレだぜキルシュタイン。

「あー……!!」

頭をガシガシ。
いま抜いたらアレだ。オカズがバレる。
本人の目の前でしてるわけでもないんだから遠慮なくすりゃいいのに罪悪感すげぇ。
穢した気になって仕方ない。

「だが抜かないのも…身体に悪い…!」

無心でやれ。そうだ無心。
行くぞキルシュタイン。短期決戦だか「ジャン!あんたのYシャツ1枚クリーニング出しといたからね!」

「ふざけんなババァ!!!だからノックしろってんだよッ!!!!」

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