「壁外に?」

元の世界に帰る為にいつまでも此処で燻ってる訳にはいかない。きっとあの森に行けば何か分かるのではないかと思った。例え収穫が得られなかったとしてもやれるべき事はやっておきたい。

「はい。是非許可を頂ければと…」
「気持ちは分かるが…無闇に危険な場所に行かせる訳に「知ってるだろ」

俺達はそれ相応に巨人に対抗出来る。
納得出来なくても納得してもらう。

「レイ、行くぞ」
「…分かった。ならこちらから1人付けさせて貰っていいか?」
「誰が来ても構わねぇが…」

足でまといになるようなら殺すからな?


*


「私情に付き合って頂いて…」

巨大樹の森を進む中。
あの時は巨人の出現や調査兵団の彼等と出会って…状況が目まぐるしく変わっていたから探索等はあまり出来なかったが改めて大きな森だ。レイは後ろを振り返る。
立体機動装置を装備し馬に乗った、

「ありがとうございます。リヴァイ兵士長」
「結局ガキのお守りか」
「リヴァイ」
「聞こえねぇ」

ぽふっ、と九尾の姿になったリヴァイの毛皮を軽く叩く。リヴァイは1人と1匹をジッと観察していた。敵意が無いのは既に知っている。とにかく目的をさっさと果たせと告げた。幾ら互いが巨人に対抗出来るからといって戦わないに越したことは無い。

「いないみたいですね」
「今の所なだけだ」
「油断は禁物…あ、此処です」

レイはリヴァイから降り近くの木の幹に触れた。見た事のない屏風を見つけて気付いたら…けれどこの場所と久遠が結び付くような手掛かりは辺りを探しても何も無い。式神はフラフラと呑気に尻尾を振っている。
兵士長のリヴァイもつられて周りを見回したが別段変わった所はなく目を引くものもない。ただの巨大樹の森だ。

「空振りか」
「…そうみたい」
「なら帰るぞ」
「あ?ガキの指図は受けね『遊びをせんとや生まれけむ』

今…?子供の声が…聞こえた…。
女の子の、声?
姿は見えないのにハッキリ聞こえる。
何処?そもそも生きている人間がいる筈ないのに。

『戯れせんとや生まれけん』
「何だってんだ」
「!いた、あそこ…」

2人と1匹の視線の先にいたのは赤い花柄の着物を着た幼い女の子。こちらに背中を見せ唄いながら鞠をついてる。顔は見えない。レイが距離を縮めようと近付いた時、女の子が急に走り出した。慌てて後を追う。

「待って!」
「おい!」
『遊ぶ子どもの声聞けば』

1人じゃ危険と言えども聞く耳を持ってくれない。しばしの鬼ごっこが森の中で続いていると一際大きい幹へと隠れるのを確認した。でもこれで一安心。

『我が身さへこそゆるがるれ』
「さぁ、私たちと一緒に帰りま…あれ…?」

そこには誰もいなかった。

「…どうなってるの…、!」

直後身体を伝う地響き。
1箇所?違うこれは…四方八方からだ。
やれやれとリヴァイはブレードを引き抜く。

「囲まれたな」
「チッ…相変わらずどいつもこいつも感想に困る面構えしやがって」

その言葉を皮切りに巨人達が一斉に襲い掛かってきたが、印は結んである。式神が尻尾を振り全ての攻撃を障壁で防いだのを確認するとレイはパン!と両手を合わせた。

『陰陽道 氷の式・極氷封双』
「…ほう?殺りやすい」

足元から徐々に巨人達が凍っていく。
身動きを止めるくらいにしかならないけれど今の状況なら十分だ。それを利用してリヴァイは次から次へと項を削いでいく。その速さ。

「すごい…」
「褒めるに値しないだろ。手間がかかってありゃしねぇ」

さすが人類最強と言われている人だ。
だが主の一言を良く思わない存在が1匹。

『闇散天襲羅・破』

パァン…ッ!!

「チッ…!」

一瞬で巨人達が破裂し消えたもののリヴァイはまともに返り血を浴びた事にご立腹の様子。ガキの都合なんざ知るか。苦笑いしているレイの方へ振り返った。何か言う事があるだろと言わんばかりに。

「……すごい、さすがですね」
「当然だ」

やはり褒められるのは気分が良い。


*


「申し訳ありませんでした…!」

謎の女の子という収穫を得て兵舎に戻り汚れた兵服から着物に着替えたレイがいの一番にした事、それはリヴァイへの謝罪。早速部屋を訪ねて冒頭の言葉を向かいに座る彼に伝えた。

「…」
「何か出来る事があれば仰ってください」
「何か…」
「はい、?」

リヴァイは立ち上がると移動し隣へ座る。
人差し指で輪郭を撫でるとふいに口付けた。

「ん…リヴァイ、兵士長…?」
「それなら身体で払ってもらう」
「え?やっ…!」

ベッドに押し倒すと襟からスッと手を入れ込む。すぐに辿り着く生肌の感触。この薄いのが…下着?これは確かに。

「何も付けてねぇのと変わんねぇな」
「あ、ぁっ…ん…」

手で胸をまさぐり乳首を刺激する。艶めかしい声。顔だって悪くない。着物の裾から覗く足もきめ細かに白く細い。噛み付きたくなるくらいに。

「…んぁ、っもう、そこまでにして…ください…っ」
「あの妖怪に毎晩抱かれてんのか?」
「っ!…そ、れは…」

逸らした視線。僅かに赤くなる頬。
どちらも肯定と取れる動作。
耳を噛んだらピクッと震えた。

「へぇ?レイ、羨ましいもんだな」

もう一度口付け。舌が入り込んでくればゆっくりと吸い取られる。こういうのが上手な所も寸分の狂いなく似ている…なんて事は有り得るの?

「…兵士長じゃないですね」
「やっと分かったか」
「リヴァイ…っ!」
「お前の可愛い反応が見れて面白かった」

気配まで変えて…わざわざ兵服までお借りしたの?あぁ、どうせならとことん似せてやろうと思ってな。どうだ?『リヴァイ兵士長』と瓜二つだろ?と聞かれたがすっかり騙された自分が何を言える立場でもなくプイとそっぽを向いた。押し倒したまま会話は続く。

「レイ」
「っ…本当にあなたの悪戯好きには…」
「仕方ねぇだろ?」

狐の性ってやつだ、諦めるんだな。
舌なめずりする妖怪が1匹。

「機嫌直せ、気持ち良くしてやるから」

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