結婚式をしたホテルのスイートルーム。
家具、装飾品に至るまで高級品とひと目でわかる内装。お部屋にいらっしゃいますとフロントのホテルマンに言われ最上階。渡されたカードキーと共にドアを潜り中へ進む。

「…おじ、さん?」

間接照明だけが点いた薄暗いリビングルームではアンティーク調の椅子に座ったエルヴィンが煙草を吸いながら机上のパソコンをじっと見ている。集中していたらしくこちらが声を掛けてようやく気付いてくれた。

「!あぁすまない、よく来てくれたね。自由に過ごしてくれていいよ」

自由に…それならとレイは窓に近付いてみた。宝石を散りばめたみたいに色鮮やかな夜景が見える。感嘆の息。すごい。感想が聞こえていたのか後ろから小さな笑い声。
チラと彼を見る。入った時から思ってた。

「…前髪下りてると…」
「雰囲気が違うか?そうだ、彼氏の家に泊まったんだって?」
「!」

エルヴィンは後ろからレイを抱き締めた。
指先で髪の毛を掬い上げサラサラと落とす。次第に緊張感を纏い強張る身体。分かり易い反応としか言えない。そのままシャツのボタンに手を掛けていった。全て外し終え開くと白い肌とブラジャーが覗く。窓ガラスが鏡のように今起こっていることを鮮明に映し出していた。

「…違います…やめてください…っ、いやっ…!」
「夜景は綺麗だけど…誰かに見られてたらどうしようか?」

此処は最上階、とても高い位置にあるけど何処かで俺達の事を見てる人がいるかもしれない。だとしたら恥ずかしいね。

「こんな姿でいるレイは」
「ゃ…ぁ、あっ…だめ!」

背中に手を入れホックを外す。下から上に撫で上げるだけでブラジャーが上がり簡単に胸が顕になった。手のひらでやんわりと揉んでいく。

「んぁ、っはぁ…や、めて…ぁ…」
「いつもより気持ち良さそうだ。マニアックな方がお好み?」
「そ、な…こと…っない…んぁっ…!」
「乳首を弄られるのが好きだったね」
「ぁっ!んぅ…っんん…やぁ…っ」
「ほら、触っただけでこんなに尖ってきた。どんなに拒絶しても身体は素直だ」

耳元で低く囁かれる声。
何処か色めいた声に弄ばれて耳から快楽が入ってくるような。エルヴィンは緩徐な手付きで片方の手を下へと移動させる。その手に伸ばされる『形だけの』嫌がる手。無視して力がどんどん抜けている足の間から秘部へと指を2本入れた。感じやすい今日は特別に最初から速く動かしてあげようか。

「ぅ、あ…ぁ、っやだ…!抜いて…っ!」
「この前ハンジとナナバとセックスしてる動画を見せてもらったよ」
「いや…っ!言わないで…っあれ…は…違う、の、…っ!」
「彼氏がいるのにあんなにやらしく喘いで、もしかしてレイはエッチな子なのかな?」
「やめ、んっ、ゃ…っあ、あっ…!」

耳朶を噛まれゾクリとした。そこから追い掛けるように達してしまう。息をする度に身体が震え、足の力が抜けて不思議と上手く立ってられない。自然と後ろにいるエルヴィンに寄り掛かっていた。
指が抜かれても胸の愛撫は止まらない。
緩やかな刺激が続くまま身体が壁に強く押さえ付けられる。間髪入れずに彼の肉棒が焼き付き、秘部の中へと押し込まれた。

「彼氏が見たらどう思うだろう」

やめて、やめてよ…やめて。

「それに色んな男の人とセックスしてる子だって知ったら?」
「や、めて…っ!!」
「そうこう言ってる内に全部入った」

上半身はガラスと触れていて冷たいのに下半身はすごく熱い。その温度差が私をまた向こうの世界へ行かせようと手招きしてくる。

「あっ、あ…っ!や、だっ…んっ!」
「なるほど、ナナバ達から聞いた通り」

名器というのがよく分かる。高い所から落ちる時と同じ。突かれれば突かれる程にふわっと身体が快感で押し上げられた。何度もそれの繰り返し。

「こんな、っこと…ぁ、あっ、もう…しないで…っ!」
「ん?レイの中は俺のを離してくれないからそれは困ったお願いだな」

構わずグチュグチュとエルヴィンのモノに犯される。ガラスが喘ぎの際に出る息でじんわりと曇っては消えた。見られてる。誰かに。そんな真実など確認しようがないのにだんだんとそう思えてきた。そんな事考えてる間にもまた限界が来そうで。

「ゃ、あぁ…っ、んっあぁ…!」
「またイったね。こんなに濡らして」
「ぁ…っ!はぁ…っう…はぁ…、っ?」

ズルッと引き抜かれ余韻に犯される暇もなく横抱きでベッドへと運ばれる。いつまでもあの場でしていたらカーペットがレイのでびちゃびちゃになってしまうだろうから。両手で足を持ち上げられるとすぐに肉棒の先端が秘部の入口を撫でてきた。

「今ので終わりとでも?」

目が合った彼はあの時の笑顔。
指と指が絡められる。
骨張った手。ズプズプと進み込んで。
エレンから貰った快感が消し潰されていく。
無意味に涙がポロポロ溢れ出た。

ぐちゅ。

「いやぁっ!抜いて…っ抜いて…!」

泣き叫んでも誰にも聞こえない。
さっきの何倍も激しい律動がベッドのスプリングを軋ませていく。

「んぁっ!あ、いや…ぁ、ぁんっ!」
「っ…泣きながら喘がれると嬉しいね、奥はそんなに気持ち良かったか?」
「んっ、ぁ…ん…ふ…!」

与えられる刺激が止まらない。
ふいにされた大人のキス。熱い舌が絡み合った。キスだけなのにグズグズにされていく。気付けば無意識にエルヴィンの首に手を回していた。

「あ、あぁっ…エル、ヴィン…っ」
「ふふ、可愛い…」
「ま…た、っ…いっちゃ…う…とめて…も、おかしく、なる…っ!」
「いいんだよなって。っ俺も…そろそろイきそうだから…一緒にイこうか。キスしよう」
「ぁ、んぅっ!んっ、んー…っ!」
「っ…」

息が上手く出来ないまま再びビクビクと震え吐き出された精液が中で広がっていった。まるで酸欠になったみたいに全身が酸素を求めて呼吸していた。入り切らなくなったそれが体温で溶けた肌を伝っていくのが分かる。私を包んでいるのは涙と汗と、セックスの時にしか出されない愛液たち。

「綺麗にしてあげるから寝てていいよ」
「はぁはぁ…っ、はぁ…ぅ…っ」

バスルームに行く間際、レイは『彼氏がいるのに』やっぱり『エッチな子』だね。
ただただその言葉に涙が静かに流れた。


*


伸びた前髪を掻き分け、ベッド横のサイドテーブルに置かれた灰皿に煙草を打ち付け吸殻を落とす。身形が綺麗に整えられ事切れたように寝ているレイのバスローブを捲った。
肌に付けられた多くの紅い跡。

「やる事が若いな」

恐らく同い年辺りだろう。
さて、ミケ達に送っておくか。
(撮られてるとも知らずに)
エルヴィンは立ち上がると煙を吐き出しながら灰皿に煙草を押し付けた。

「…んっ…エ…レン…」

聞き慣れない名前に振り返る。

「おやおや」

でも安心して欲しい。
『誰にも言わない』からね。
もちろんそれは気が向いたらの話。

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