あのエルヴィン・スミスが。
両手で顔を覆っている。
初めて見る光景に珍しい超えて若干心配になった3人。これは余程の事だと察した。だから聞いてみた、どうしたんだと。

「新兵のレイ・ローゼンハイム…?確かにいるな」
「その子がどうかしたの?」

好きになってしまった。
声は至っていつものエルヴィンなのに顔は手で覆われたまま。

「彼女の事を」
「「「は?」」」
「以上だ」
「以上なのか」
「いやいや以上じゃないでしょ!新兵と会う機会あんまないのに?」

あ、やっと手どかした。
至っていつものエルヴィンだ。

「前に書類を持ってきてくれたんだ」
「ふむふむ」

団長…あ、あの…っ、新兵の分際で言う事ではありませんが…あまり…無理なさらないでください、…し、失礼致しました!

そう言われたら何だか急に彼女が可愛く思えてしまって。自分でもおかしいくらいに気付いたら好きになってしまった。

「以上だ」
「またそれか」
「さっきからまどろっこしい。テメェはどうしたいのかさっさと、」

失礼します。

遮るようにドアの開く音。入ってきたのは噂になっているレイだった。それなのに至って冷静な団長。あれ?好きな子が来たってのに慌てふためく事も無いだなんて。

「あ…す、すみません!お忙しい所でしたらまた後で伺います」
「構わない、入ってくれ」
「は、はい。上官の方から団長にと」
「ありがとう」

書類を受け取り普通に会話している。
やはり想いは告げずに心の中にしまっておくんだろうか。

「レイ」
「はい!」
「愛してるよ」

心にしまっておくどころか想いが溢れに溢れ過ぎて大変な方向に突っ走っていた。

No.20 抑えられない気持ち

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